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首都直下地震への備え―火の海から身を守る

 首都を襲う直下型の地震は、いつ起きてもおかしくない。

 マグニチュード7級が起きる確率は10年以内に30%、30年以内なら70%に跳ね上がる。

 大地震では多くの火災が同時に発生し、火の手に逃げ道を阻まれてしまう。

 大きな被害を招いた1923年の関東大震災では21万棟が焼失し、死者・行方不明者10万5千人のうち、火災による犠牲者は9万1千人にのぼった。

 いま巨大都市が大火にのまれたら、どうなるか。

 政府の中央防災会議は、最悪ならば焼失家屋数は大震災を上回る65万棟とみるが、火災による死者は6200人と想定している。

 被害は少ないにこしたことはないが、死者数の見積もりはあまりにも少なくないか。なぜ、そんな被害想定になったのか。

 それは、想定のもとになった大火の事例の大半が、地震時ではない平常時の火災データを使っていたことによる。

■被害想定の見直しを

 地震時は建物が倒れ、道路を塞いで消防車も通れない。消火栓が使えなくなる恐れもある。それが被害を大きくする。

 だからこそ、被害想定は平常時の火災ではなく、地震火災をもとにつくるべきである。

 地震時の焼失家屋に対する焼死者の割合をみてみると、その比率が小さいのは阪神大震災だ。ほぼ無風だったからで、それでも7千棟が燃えて500人が亡くなった。最も比率が高いのは27年の北丹後地震の京都府峰山町(当時)で、1千棟が燃えて800人が焼死した。

 そうした被害実態から見ると、1千棟が燃えると100人が犠牲になると考えるべきだ。

 首都直下の被害想定によると、65万棟が焼失すれば焼死者は6万人を超えることになる。

 政府の想定が過小評価ともいえる内容になったのは、40件以上の大火の事例をもとにしながら、地震火災の事例は関東大震災だけだったからだ。

 平常時の火災でみれば、例えば76年に山形県酒田市で起きた大火では、1700軒余が燃えて死者は1人だ。映画館から出た火が強風にあおられて延焼したが、地震時のような道路閉塞(へいそく)もなく、避難できた。

 地震火災の事例をきちんと使えば、被害想定は違った結果になるはずだ。地震火災のリスクに正しく向き合って、被害想定を見直さなくてはいけない。

 東京の大きな弱点は山手線の外側にドーナツ状に木造住宅の密集地が広がっていることだ。

 木密(もくみつ)と呼ばれるその地域では地震時に火災が発生して消せなくなると、木造の家が連なる限り燃え広がってしまう。

 小さな火のうちに住民で消し止める態勢を整えておきたい。

■地域防災力を高めよ

 参考になるのは、火災危険度が最高レベルに指定されている北区上十条5丁目の取り組みだ。町会が災害ボランティアを結成し、毎月、消火栓とホースをつなぐスタンドパイプを使った訓練をしている。

 一方で避難のタイミングも大事である。同地区の住民アンケートでは、地震時に火災が起きてもぎりぎりまで避難しないか、誰かの指示待ちの傾向が強いことが、浮かび上がった。

 これでは逃げ遅れて火に巻き込まれる恐れがある。調査にあたった関沢愛・東京理科大教授は、初期消火は大事だが、てこずった段階で見切りをつけて逃げる決断が大事だと強調する。

 高層マンションやオフィスビルで火災が起きる恐れもある。スプリンクラーや防火扉の点検を怠らず、いざという時にはどう避難するか、ふだんから訓練を重ねておく必要がある。

 避難先についても、検討すべきことが多い。

 同時多発火災で膨れあがった炎に取り囲まれると、100メートル離れていても放射熱で危険だ。そこで関沢教授は「地域の小中学校に避難するのではなく、広域避難場所に直接向かうことが重要だ」と指摘する。

 都は5ヘクタール以上の広さがある公園や大学構内など197カ所を広域避難場所に指定している。周辺に燃えやすい建物はないか、5ヘクタールの広さで本当に安心か。いま一度、検討が必要だ。 

■避難場で物資備蓄を

 無事に避難できたとしても、それからが大変だ。推定では、広域避難場所に最大で964万人が身を寄せる。トイレにも飲み水にも困るだろう。救援もすぐには期待できない。

 せっかく避難できても、健康を損なっては元も子もない。助かった命をつなぐためにも、広域避難場所のインフラ整備を考えたい。そこを使う地域の住民や企業も費用を負担して、食料や医薬品などの備蓄態勢をつくってはどうだろうか。

 日本列島は地震活動の活発な時期にはいっている。関東大震災から90年たったきょうは「防災の日」。地震火災から助かるためにはどうすればいいか。家族で考える一日にしたい。

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