雪あかりの街(4)
早朝、浅草橋街園での撮影終了後、次の撮影地「浅原硝子製造所
へスタッフ一同向かいました。
この浅原硝子ではシナハン・ロケハンの時からお邪魔していて、
非常に協力していただきました。
問題は、職人である浅原さんがご病気であったことと、窯が使用できる
状態では無かったことでした。
窯のほうはNHK札幌放送局のバックアップがあり修復されることが
決まっていましたが、浅原さんの病状が思わしくなく撮影直前で
亡くなられたのでした。
撮影継続の危機となり、断念するか別場所で撮影するかの
判断を迫られたのでした。
そこに父親の意志をつぐため、浮き球を制作できる長男宰一郎さんが
急遽神奈川県から帰ってきてくださり、次男の卓次郎さんが窯の
修復作業をしてくれることとなりました。
窯の修復といっても、組み直し後が大変で、火を入れても消えてしまったり
窯の温度が安定しなかったり、すすが出て工房にいられなくなったり
で、硝子を制作できるようになるまで一周間以上かかりました。
徹夜で温度調節までしてくださいました。
既に撮影も始まっておりギリギリで間に合ったのでした。
そして本番、演技指導は宰一郎さん。
見事な手さばきで浮き玉を吹き上げます。
そのすぐそばで職人役の塩見三省さんが、真剣な目で見つめます。
ふたりの雰囲気に圧倒されながら、浮き球が完成。
スタッフから拍手がわき上がりました。
この後も真剣に硝子制作への質問をぶつける塩見さん。
丁寧に答える宰一郎さんのツーショットが続くことに。
そして撮影本番では、見事に職人としての役を演じて見せた
塩見さんに、名優とはこういう人のことかと感心したのでした。
普段の塩見さんはとてもフレンドリーで、私の台本に気軽にサイン
してくださいました。
よく見てみると一人一人サインが違うんですよ。
驚きました。
現在浅原硝子製造所は、宰一郎さんが、跡を継ぎ硝子製品を
販売しています。