復興を問う:東日本大震災 第1部・自立への模索/4 「自然」生かして集客

毎日新聞 2013年08月27日 東京朝刊

夏休みに入り、津波で打ち上げられた「第18共徳丸」の見学者には子どもたちが目立つ。市は保存断念を表明した=宮城県気仙沼市で7月、小川昌宏撮影
夏休みに入り、津波で打ち上げられた「第18共徳丸」の見学者には子どもたちが目立つ。市は保存断念を表明した=宮城県気仙沼市で7月、小川昌宏撮影

 ◇気仙沼の観光「被災地」頼み限界

 「これだけのものがここまで運ばれてきたんだ」。東日本大震災の津波で港から約800メートル先に打ち上げられた大型漁船「第18共徳丸」を、九州から来た家族連れが見上げる。夏休みの宮城県気仙沼市には、被災地見学のツアーや個人旅行客が絶えない。

 気仙沼商工会議所副会頭の菅原昭彦さん(51)は、この光景を複雑な思いで眺める。「『被災地』の形容は5年後、10年後には取れますから」

 水揚げ日本一のカツオやフカヒレなどの海の幸、リアス式海岸の景勝地に恵まれた気仙沼は三陸の中心的観光地だ。だが最もにぎわったのは高度成長期で、バブル崩壊後は低迷が続いた。団体から個人旅行へ移った顧客ニーズに、手を打たなかったのが主な理由だ。

 気仙沼湾を見下ろす高台で1967年から営業する「ホテル望洋」の加藤英一社長(57)は「アクセスの悪さもあり、物見遊山だけではもう人を呼べないのに、漁業をもっと観光に生かす取り組みもなかった」と振り返る。

 震災が追い打ちをかけ、2011年に市を訪れた客は震災前の約6分の1にしぼんだ。しかし12年は約78万4000人と前年比8割増。今年の大型連休(4月27日〜5月6日)は13万人以上と前年の2・3倍となった。

 早稲田大の復興支援チームが昨年行った調査では、来訪者の目的は「被災地訪問」と「消費による支援」がともに7割(複数回答)で、次が「ボランティア」(32%)。気仙沼に再び人を呼び込んだのが「被災地」の顔であることは明らかだ。

 だが「目玉」の共徳丸について、市民アンケートで「保存の必要はない」との声が7割を占め、菅原茂市長は今月、断念を表明した。市は観光を再生の重点産業に位置づけるが、「被災地」頼みの限界が早くも見える。

 ジレンマの中、若い世代では新たな試みも始まっている。

 自然を一層生かした観光を模索するのは、地元の環境NPO「森は海の恋人」副理事長の畠山信さん(35)。市で生まれ、高校卒業後にナチュラリストで作家のC・W・ニコルさんの門をたたき、生物調査を学んだ。

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