復興を問う:東日本大震災 第1部・自立への模索/3 企業誘致、地場不安

毎日新聞 2013年08月26日 東京朝刊

 ◇釜石「今の人材に去られたら…」

 更地が目立つ岩手県釜石市の中心市街地の外れにあるビルに、仕事を終えた30〜40代の若手経営者や商業者ら十数人が集まった。

 「釜石の海を環境教育の発信地にできねえか」「コンテナ置いて三陸の魚を使ったフレンチを提供したらどうかな」……。2012年5月に発足したまちづくり団体「NEXT KAMAISHI」。事務局長を務める水産加工会社「ヤマキイチ商店」専務の君ケ洞(きみがほら)剛一(たけいち)さん(35)は「大企業にできないことをしたい」と意気込む。

 かつて新日本製鉄(現・新日鉄住金)の企業城下町として栄えた釜石市。1960年代に9万人を超えた人口は鉄冷えで急減し、にぎわいは消えた。

 「一企業への依存」を反省する声は官民から上がった。市が取り組んだのは多くの企業誘致。89年の高炉休止後、東日本大震災までに26社を誘致し、特に91年に進出した自動制御機器メーカー大手のSMC(東京都)は震災後も地元を1100人超の雇用で支える。

 市で15年間企業誘致に携わった釜石・大槌地域産業育成センターの佐々隆裕専務理事(58)は、三陸で突出した釜石の企業集積の理由に「新日鉄の遺産」を挙げる。SMCなどが立地したのは、最大で市の平地の6割超に及んだ新日鉄の所有地。震災後の撤退は2社にとどまり、逆に5社を誘致しており、佐々さんは「誘致を続けた成果が復興に結びついている」と胸を張る。

 さらに来春にはイオンタウン(千葉市)が出店する。新日鉄が市の中心部に所有する一等地。市幹部は「歴史的英断」と新日鉄を持ち上げる。

 だがこうした企業進出に、被災から立ち直っていない地場企業は不安を募らせる。イオンはパートを中心に500人規模の雇用を見込む。ハローワーク釜石によると、釜石・大槌地区の6月の有効求人倍率は1・27倍。建設や水産加工などが人手不足に苦しむ中、奥友忠信所長は「働いている人を引きはがすことになる」とみる。

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