「優先席で携帯電話オフ」は本当に妥当? 医師の指摘は

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(更新 2013/1/31 11:30)

電車で見かける「携帯オフ」の呼びかけ。日本不整脈デバイスの平均寿命は6年前後。ISO規格を満たさない機種の利用者は「かなり少ない」(撮影/高井正彦)

電車で見かける「携帯オフ」の呼びかけ。日本不整脈デバイスの平均寿命は6年前後。ISO規格を満たさない機種の利用者は「かなり少ない」(撮影/高井正彦)

 電車内に虚しく響く「優先席付近での携帯電話オフ」の呼びかけ。だが現実には、優先席付近で携帯を操作する乗客は数多い。現実を直視すれば、マナーの悪さを嘆くより、呼びかけの見直しを考えるほうが妥当かもしれない。

 呼びかけの背景にあるのは、心臓ペースメーカー利用者への配慮だ。

 電気で心拍を整えるペースメーカーは、携帯の電波で誤作動を起こす場合もある。携帯が普及し始めた1997年、学界や業界、関係省庁でつくる協議会は、ペースメーカーと携帯は22センチ以上離すよう勧める「距離指針」を作成。鉄道各社はこれらをもとに、優先席付近での携帯オフを呼びかけてきた。

 では、携帯が原因とされるペースメーカーの事故は、これまであったのだろうか。総務省などによれば、電車内外を問わず「皆無」だ。

「胸ポケットに携帯を入れて抱き合うなど、極めて特殊な状態が一定時間続く場合を除き、ペースメーカーが電波に干渉される可能性は極めて低い。それに干渉されてもすぐに健康被害が起きるわけではありません」

 中島博・板橋中央総合病院不整脈・心不全診療部長は話す。

 ペースメーカーの利用者は、どう考えているのだろうか。日本心臓ペースメーカー友の会の日高進副会長が話す。

「会員には、近くで携帯を使っていても大丈夫と伝えています。ただ、古いペースメーカーを使っている人がいるかもしれないし、満員電車で携帯が密着するかもわからない。携帯オフを変えてほしいとは思いません」

 一方、前出の中島医師は、こう指摘する。

「正しい知識が大事なのに、電車の呼びかけは『携帯は危ない』という漠然とした不安感を広めている。普通の生活を取り戻すために装着したはずの患者が、怖くて電車に乗れなかったり、ペースメーカーにより生活が制限される逆転現象が起きている」

 無用な恐怖と摩擦を減らすため、携帯オフは満員時に限るのも一案ではないか。

AERA 2013年2月4日号


    

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