消費者物価はプラス幅が拡大、生産復調で雇用も改善-7月統計 (3)
8月30日(ブルームバーグ):30日公表された7月の国内経済統計は、全国消費者物価指数 (生鮮食品を除いたコアCPI)の前年比が2カ月連続で上昇する一方、鉱工業生産指数 の前月比は2カ月ぶりにプラスに転じた。雇用情勢も引き続き改善した。甘利明経済再生担当相は閣議後会見で「総合的に勘案して日本はデフレから脱却しつつある」と述べ、安倍政権の取り組みが順調に進んでいるとの認識を示した。
総務省が発表した全国コアCPIは前年同月比0.7%上昇し、プラス幅が前月から拡大、事前予想も上回った。エネルギー関連価格の上昇が全体を押し上げた。先行指標とされる東京都区部の8月は同0.4%上昇で、4カ月連続のプラス。ブルームバーグ・ニュースがまとめた予想中央値は全国が0.6%上昇、都区部は0.4%上昇だった。
SMBC日興証券の宮前耕也シニアエコノミストは「全国コアCPI前年比は、輸入物価上昇を主因に当面プラス圏を維持しやすい」と指摘。今回の都区部の結果やエネルギー価格動向を踏まえ、「8月の全国コアは前年比0.7%上昇程度」と予想し、「9月は昨年の反動等でいったんプラス幅が縮小しやすいものの、それ以降は再びプラス幅が拡大しやすい」としている。
第一生命経済研究所の新家義貴主席エコノミストは「足元の物価上昇がエネルギー主導であることは確かだが、それ以外の品目にも改善の動きが出ていることは評価すべきだ」と述べた。
不安は海外経済生産動向も回復基調が持続。経済産業省が発表した7月の鉱工業指数速報(季節調整済み、2010年=100)によると、生産指数は前月比3.2%上昇の97.7となった。プラスは2カ月ぶりで、伸び率は11年6月以来の水準。汎用(はんよう)・生産用機械工業や電子部品・デバイス工業などが上昇した。ブルームバーグ・ニュースによる事前調査では、エコノミストの予想中央値は同3.6%上昇だった。
先行きの生産動向を示す製造工業生産予測指数は、8月が前月比0.2%上昇、9月は同1.7%上昇が見込まれている。同省は「総じてみれば、生産は緩やかな持ち直しの動きがみられる」との判断を示した。
日本政策投資銀行の田中賢治・経済調査室長は「基調としては、生産は着実に持ち直している」と指摘。一方で「不安材料は海外経済」とし、円安にもかかわらず輸出に勢いが出ないのは「海外経済が力強さを取り戻せずにいるため」としている。
一方、雇用情勢も引き続き改善。総務省が発表した労働力調査によると、完全失業率 (季節調整済み)は前月の3.9%から3.8%へ低下。厚生労働省が発表した有効求人倍率(季節調整値)も0.94倍で、前月を0.02ポイント上回った。
ソシエテ・ジェネラル証券の会田卓司チーフエコノミストは「ここ数カ月の早いペースの失業率の低下は、非労働力人口の増加が大きく寄与しているため、実力ベースの失業率はまだ4%であると考えられる」と指摘。製造業の雇用活性化が求められるとして、1ドル=110円程度までの円安が必要だとの見方を示した。
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更新日時: 2013/08/30 11:37 JST