特集ワイド:谷野作太郎・元駐中国大使に聞く/下 「河野談話」「村山談話」 「痛み」日本人として共有を
毎日新聞 2013年08月28日 東京夕刊
−−安倍晋三首相は15日の全国戦没者追悼式の式辞で、歴代首相が表明していたアジア諸国に対する加害の「反省」や「不戦の誓い」を表明しませんでした。
谷野 中国や韓国、そして米国などがいら立つのは過去の一時期の「歴史」について、時折、日本の有力な方々がこれを歪曲(わいきょく)したり、開き直ったりされる言動についてです。それは日本に対する国際社会の目線を下げ、日本人の品格、誇りを最も深いところで傷つけることになる。でも、安倍首相はいろいろなところでおっしゃっているところからみても、決してそんな方ではないと思います。
−−集団的自衛権の行使を容認し米国との関係を強化しようという意見があります。憲法改正を含め中国、韓国は「右傾化」と批判しています。
谷野 ピント外れな言い方だと思いますね。しかし、そのような先方の誤解をただすためにも、ハイレベルの日中、日韓政治・外交関係の正常化が望まれます。
日本側では尖閣が日米安保条約(第5条)の適用範囲に入っているか否かということに関心が向かいがちですが、その前に自分の領土は自らの手で守るという気概こそが必要でしょう。それでこそ米国の支援が受けられる。今の政権下でこの面で施策が講じられつつあるのは当然なことだと思っています。(敬称略)
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■人物略歴
◇たにの・さくたろう
1936年生まれ。東京大法学部卒。60年外務省入省。アジア局長、内閣外政審議室長を経て95年駐インド大使、98年駐中国大使。2001年退官。12年から日中友好会館顧問。