覚悟
テーマ:* なつくんのこと赤ちゃんは絶対元気に産まれてくる そう強く信じる一方で
『 覚悟 』 のようなものも生まれ始めていました
この子がお腹にいてくれる時間はもう短いのかもしれない
わたしは時間を惜しむように
痛むお腹に手を当てて毎日赤ちゃんとお話ししました
赤ちゃんおはよう 今日も一緒にがんばろうね
赤ちゃん 今日も1日ママと一緒にいてくれてありがとう
あなたと一緒にいられてママは1日とっても幸せだったよ
赤ちゃん ママはあなたのことが世界でいちばん大好きなんだよ
回復の兆しがないまま
とうとう当初の退院予定日の2週間が過ぎようとしていました
検査により 卵膜から羊水が漏れていることがわかりました
細菌はすでに卵膜に感染していたのです
長引く入院と治療 終わりの見えない不安
繰り返す出血と腹痛 点滴による吐き気と胃痛 炎症による発熱 減ってゆく羊水
腕は腫れと内出血だらけで 針を刺せる血管が残っていませんでした
吐き気で食べ物を飲み込めなくなり 体重がみるみる落ちていきました
治療に耐えられるだけの体力も 不安に耐えられるだけの気力も
もう限界に近づいていました
1日中 ぼんやり病室の天井を見つめて過ごしました
みんなにごめんねって思っていました
旦那さまも お父さんもお母さんも
本当はもっと幸せな気持ちで赤ちゃんが産まれてくるのを待っていたはずだったのに
こんなことになってしまって 本当にごめんね
赤ちゃん ごめんね ―
その日の夜 ものすごい腹痛に襲われました
今までと比較にならないほどの出血に 血の気が引きました
助産師さんの様子が慌ただしくなりました
点滴がMAXまで引き上げられましたが 全く痛みが引きません
お願い・・・ お願いだから鎮まって・・・
神様 赤ちゃん助けて・・・
そのまま朝を迎え すぐに診察を受けました
― 映し出されたモニターに 羊水はほとんど残っていませんでした
破水 昨夜の激しい出血とともに破水してしまったのです
赤ちゃんはほとんど羊水のなくなったわたしのお腹の中で
苦しそうに それでも頑張って心臓を動かしていました
だけど もう・・・
先生は優しく静かに言いました
― 赤ちゃんを 外に出してあげましょうね
涙がぽろぽろとこぼれ落ちました
ぽろぽろぽろぽろこぼれ落ちました
赤ちゃんごめんね
赤ちゃんごめんね
赤ちゃんごめんね
静かにこぼれた涙は やがて嗚咽にかわり
先生がお母さんはがんばりましたよと言ってくれた優しい声だけが今でも耳に残っています
赤ちゃんを失う悲しみは 言葉なんかでは到底言い表すことができません
だけどあの時 赤ちゃんを外に出してあげましょうと言われたあの時
わたしはその悲しみの真ん中にいながらも
ほんの少し ほっとしてしまったんです
あぁ これでやっと楽になれるって
心のどこかで ほっとしてしまった自分がいたんです
先生 わたしはがんばってなどいません
最後の最後まで自分のことしか考えられなかった 最低の母親です
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