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【社説】

消費増税の是非 民意は「反対」が大勢だ

 政府は、来年四月から消費税を5%から8%に引き上げるかどうかを判断する参考のため、有識者から意見聴取を始めた。報道各社の世論調査で「反対」が大勢を占めた民意こそ重視すべきだ。

 消費税増税法は、来年四月に8%、再来年十月には10%に引き上げを定めているが、付則で経済状況次第で増税を見送る「景気条項」もある。安倍晋三首相は、増税した場合にデフレ脱却が遠のくなどの景気への悪影響はどうか、逆に増税予定を変更した場合に財政再建への姿勢が問われ、金融市場が混乱することはないかなどの意見を求めている。

 有識者の顔ぶれは、財界やエコノミスト、経済学者のほか、幅広い業界や団体からの六十人に及ぶ。それぞれの立場から多様な意見を求めるのは有意義だとしても、ともすれば自己の利益にかなった思惑先行となる懸念がある。

 増税賛成を表明している経団連なら、増税しても景気が落ち込まないよう法人税減税や投資減税を求めよう。同様に、建設や不動産業界は公共事業の拡大を、農協なら補助金をといった具合である。そうなれば財政再建どころか財政バラマキで逆行となる。財務省の御用学者といわれる大学教授や同省から天下りを受け入れたシンクタンクなどの意見も、推して知るべしである。

 明らかなのは、消費税を8%に引き上げた場合に、増税分と厚生年金、国民年金保険料の引き上げを合わせ、国民負担は年九兆円も増えることだ。これは一九九七年に消費税を3%から5%に引き上げた時の、増税と医療費負担が重なった負担増と同水準である。

 しかも当時より経済規模(名目GDP)は9%も縮小している。相次ぐ物価上昇が家計を直撃する中で景気へのショックは極めて大きいはずだ。「十五年デフレ」の起点となった九七年消費税増税の二の舞いになる恐れは強い。

 報道機関が意見聴取に合わせ実施した世論調査では「予定通りに消費税増税を実施すべきか」に対し、共同通信社と全国紙三紙ともに反対が賛成を上回った。共同では「予定通りの増税」は22・5%しかなく、現状維持と増税の時期や税率幅の見直しを合わせると73・8%に上った。

 そもそも消費税増税は、社会保障との一体改革として決まったのであり、社会保障の抜本改革なしの増税は許されないはずだ。民意は消費税増税をする環境にないと判断しているのである。

 

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