内戦状態が続く中東のシリアに対し、米、英、フランスが軍事行動の検討に入った。首都近郊で、アサド政権が化学兵器を使って多くの市民を殺傷した疑いが強まっている。[記事全文]
国会審議のあり方を改めようという動きが出てきた。自民、公明、日本維新の会が協議を始め、自公両党は民主党にも呼びかける考えだ。先の通常国会の会期末に、安倍首相の予算委出席[記事全文]
内戦状態が続く中東のシリアに対し、米、英、フランスが軍事行動の検討に入った。
首都近郊で、アサド政権が化学兵器を使って多くの市民を殺傷した疑いが強まっている。
米英仏は、大量破壊兵器の使用は許さない決意を国際社会に示し、同じ殺戮(さつりく)を再び犯さないよう抑止するとしている。
だが、いまの米英仏の動きは性急であり、危うさを伴う。
化学兵器が使われたとの疑惑は、まだ十分に解明されたとはいえない。内戦を収束に導く抜本的な道筋も描かれていない。
いまは国連の調査団による事態の解明を尽くすべきであり、内戦の収拾に向けた外交調整にこそ本腰を入れるべきだ。
アサド政権は疑惑を否認しているが、今月から現地入りした国連調査団による解明に全面協力しなくてはならない。
調査の結果は、国連安全保障理事会に報告される。米欧は、その結果を踏まえて、これまで対シリア決議に反対し続けてきたロシアと中国の説得を再度試みることが必要だろう。
同時に、トルコやアラブ連盟など深い利害を持つ周辺国との意見調整を急ぎながら、シリアの人道危機に国際的な取り組みを強める新たな枠組みづくりを進めるべきだ。
2年半におよぶ内戦の死者は10万を超えた。隣のレバノンやヨルダンなどへの難民は200万にのぼり、国連によると、その半数は子どもだという。
この惨状に加えて化学兵器が使われれば、大量殺戮は歯止めがなくなる。これまで長らく介入に慎重だったオバマ米政権が危機感を強め腰を上げるのは、遅すぎたとはいえ当然だ。
だが、いま検討が伝えられる行動は軍事介入でしかない。アサド政権の軍事施設を破壊すれば無分別な攻撃の一時的な抑止につながるかもしれないが、逆にかえって混乱を拡大させる恐れがつきまとう。
空爆が反体制派を勢いづけたとしても、各派はいまも結束していない。中には国際テロ組織アルカイダに通じるイスラム過激派もいる。アサド政権後を担える国家体制の受け皿はまだ見えていないのだ。
米欧の強硬策は、アサド政権を支えるイランのロハニ新大統領を対話路線から遠ざける心配もあるだろう。中東全域が流動化する懸念がぬぐえない。
今回の化学兵器疑惑を機に米欧が力を注ぐべきは、無秩序な争いをやめさせ、各派を話し合いの席につかせるための方策を練ることだ。空爆では、抜本的な解決策は生み出せない。
国会審議のあり方を改めようという動きが出てきた。自民、公明、日本維新の会が協議を始め、自公両党は民主党にも呼びかける考えだ。
先の通常国会の会期末に、安倍首相の予算委出席などをめぐって参院で与野党が対立。首相問責決議が可決されたあおりで民主党も賛成していた重要法案が廃案になった。国民には全く理解しがたいことだった。
こんな茶番を繰り返さないためにも、各党が改革に乗り出すことには賛成だ。前に進めてほしい。
与党がまず手をつけようとしているのが、首相や閣僚の国会出席を減らすことだ。閣僚に代わって副大臣の答弁機会を増やし、委員会の審議時間に上限を設けることを検討している。
安倍首相は先の通常国会で、衆参両院の予算委員会に約180時間出席した。日本の首相の国会出席は、欧州諸国の首相に比べ格段に多いとされる。
これが首相から多くの時間を奪い、外交日程の組み立ても難しくするといった弊害をもたらしている。これは昨年まで政権を担った民主党を含め多くの党の共通認識だ。
審議時間に機械的に上限を設けることには疑問があるが、工夫する余地は十分にある。
要は、首相らをいたずらに国会に拘束するのではなく、メリハリをつけた質疑や議員同士の論戦の場にすることだ。
そのためには、党首討論の活性化が必要だ。週に1回開く原則をきちんと守る。45分しかない時間も延ばし、いまは参加できない中小野党の党首にも門戸を開くようにしてはどうか。
さらに踏み込んで、会期のあり方も見直したい。
いまは会期中に審議が終わらなかった法案は原則廃案になる。このため野党は抵抗の手段として審議引き延ばしに走り、国会が「政策論争」でなく「日程闘争」の舞台になっていると、野党の側からも指摘されてきた。通常国会を大幅延長して実質的に「通年国会」とする試みを、検討すべき時だ。
こうした改革を進めなければならないのは、社会保障の立て直しや震災・原発事故への対応など、国会が迅速な対応を求められる案件が山積しているからだ。議員が日程闘争で仕事をした気になっていられる時代はとっくに終わっている。
司法から抜本的な改革を求められている衆参両院の選挙制度改革を急がねばならないことは、いうまでもない。
のんびりと構えている余裕はないはずだ。