電力会社の赤字と原発経費の関係
|
■平成24年度の決算と原発経費(有価証券報告書記載分のみ)、電気料金の値上げ幅、規制部門と自由部門の収支等の情報がほぼ出揃ったので、データを整理しておきます。
■原発維持費の推移
東日本大震災の発生が平成22年度末なので、原発がフル稼働していた年度として、平成21年度の有価証券報告書に記載されている「原発発電費」を合計すると「1.846兆円」に上ります。
これに対して昨年度(平成24年度)の「原発発電費」は、4,400億円削減されてはいますが、それでも「1.4兆円」もの経費が(ほぼ発電ゼロの原発に)費やされていたことが分ります。
注2:この他に本社経費や、原発専用の超高圧送電線経費、光熱水費などがかかっていますが、情報は公開されていません。東北電力の電気使用量のみ年間で4億kWhとありますので、ここから推計すると、全国で60億kWhとなり、電気代原価を10円/kWhで計算すると、凡そ600億円になります。
→年間維持費が600億円増えて「1.462兆円」に。
■電力会社の赤字額
平成24年度の電力会社の決算を合計すると、「1.358兆円の赤字」になります。
報道では「原発停止による燃料費の高騰」が主因とされていますが、実際は、上記の「ほぼ発電ゼロの原発に費やされていた原発経費1.4兆円」がそのまま赤字になていることが分ります。
勿論燃料費は高騰していますが、燃料費調整制度のおかげでその分電気料金収入も増えていますし、4,400億円ほどですが、原発発電費も削減されていますので、「原発停止による燃料費の高騰」だけでは、ここまでの赤字にはなりません。
繰り返しますが、下表の数字を比較すれば、「1.36兆円の赤字」の主因は、「ほぼ発電ゼロの原発に費やされた原発経費1.4兆円」であることは明らかです。
■今年度以降の予測
電気料金の値上げによって、各社の年間収支がどう改善されるのか。また、原発の再稼働が遅れることで再値上の必要が生じるのか。等について少し調べてみました。
なお、電力会社単体の収支が分かり易いように、連結決算ではなく単体決算を用いることにします。また、福島原発の収束が見えない東電と、大飯原発が再稼働中の関電については、純粋な検討ができないため、ここでの分析からは除外することにします。
個別に見ると、
北海道電力:原発経費を8割近くカットしないと赤字解消は難しい。
東北電力:現状のままでも赤字解消
中部電力:原発経費を4割近くカットすれば赤字は解消する。
北陸電力:現状のままでもほぼ赤字解消。
中国電力:原発経費を5割近くカットすれば赤字は解消する。
四国電力:原発経費を2割近くカットすれば赤字は解消する。
九州電力:九電は自力での黒字化は困難。
■原発廃炉の可能性
原発を廃炉にすることで、8割方の維持費は削減されるものとして計算すると、平成24年度の(8社合計の)「原発発電費7,015億円」から、凡そ5,600億円が削減されることになり、これと赤字3,000億円との差額は2,600億円になります。
一方、廃炉に伴う特別損失を計算すると、下表の合計4.4664兆円から東電と関電を差し引いた残り「2.6211兆円」となり、10年分割で計上するとすれば、年額は凡そ2,600億円になります。
→以上より、原発を廃炉にすることによって、(8社合計の)単年度収支を黒字化することができるとともに、廃炉に伴う特別損失の分割回収も可能になる、という結果に(計算上は)なります。
|