台湾人の親日感情を最も率直に表した素晴らしい本が、やはり日本語世代の実業家である蔡焜燦(さい・こんさん)氏が書いた「台湾人と日本精神」(小学館)だ。日本精神はリップンチェンシンと発音する。勤勉・正直・順法精神・義理人情に厚いなど、すべて良いことは、この“日本精神”という言葉で表されるという。蔡氏は陸軍の少年飛行兵だった。
戦前の日本は、台湾よりも朝鮮統治に力を入れた。にも関わらず、台湾人は日本の台湾統治を高く評価してくれている。
それを代表するのが日本の水利技術者、八田與一(はった・よいち)の造った「嘉南大●(=土へんに川)(かなんたいしゅう)」という、台湾南部の嘉南平野を潤す、巨大な烏山頭ダムと潅漑(かんがい)工事だ。
現在の馬英九(ば・えいきゅう)総裁は、戦後台湾を占領した蒋介石(しょう・かいせき)一派の末裔で「台湾人意識が弱く、中国人意識が強い」といわれるが、八田の功績をたたえており、台湾の教科書にも「恩人」として登場する。
戦時中、神奈川県の高座(現在の座間市、大和市など)に、海軍の兵器工場(高座海軍工廠)があり、ここで台湾出身の10代前半の若者たち約8400人が勤労奉仕をしていた。彼らは台湾に帰国後も「台湾高座会」という同窓会を作り、日本に感謝し、若き日の苦労を懐かしんでいる。
南北朝鮮とは、何という違いであろうか。韓国だったら「強制連行」事件になっていっていたところだろう。
■藤井厳喜(ふじい・げんき) 国際政治学者。1952年、東京都生まれ。早大政経学部卒業後、米ハーバード大学大学院で政治学博士課程を修了。ハーバード大学国際問題研究所・日米関係プログラム研究員などを経て帰国。テレビやラジオで活躍する一方、銀行や証券会社の顧問、明治大学などで教鞭をとる。現在、拓殖大学客員教授。近著に「米中新冷戦、どうする日本」(PHP研究所)、「アングラマネー タックスヘイブンから見た世界経済入門」(幻冬舎新書)。