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JR気仙沼線BRT運行1年 定着しつつも利用者伸び悩み

復興が徐々に進む被災地で、専用道を走る気仙沼線BRT=気仙沼市波路上

 東日本大震災で被災したJR気仙沼線の柳津−気仙沼駅間(55.3キロ)で、バス高速輸送システム(BRT)の暫定運行が始まり、20日で1年が過ぎた。高校生を中心に新たな生活の足として定着しつつあるものの、利用状況は苦戦が続く。一方で移設を伴う鉄路復旧の見通しは立っておらず、地元自治体などは焦燥感を強めている。

 沿線では気仙沼高の18%(144人)、志津川高の37%(130人)の生徒がBRTで通学する。志津川高の佐藤充幸校長は「BRTは地域の教育に不可欠。1時間に最低1本運行されるのはありがたい」と感謝する。
 柳津−気仙沼駅間の所要時間は普通列車より19〜32分遅い最短1時間53分となったが、最大1日22本だったダイヤは現行63本に増えた。
 BRTは列車に比べて弾力的なダイヤ編成が可能な半面、輸送力で劣るのは否めない。「車内が狭いのですぐに混雑する」(気仙沼高1年男子)「専用道を走るのでほぼ時間通り」(同高2年男子)と、利用者の反応はさまざまだ。
 肝心の利用者数は、地域の復興の遅れもあって伸び悩む。JR東日本がことし4月に行った簡易調査では、1日の乗客は約380人。鉄道だった2009年度の平均通過人員(1日898人)の約4割の水準にとどまった。
 JR東は「地域の足を守りながら観光客の利用を促したい」(西野史尚仙台支社長)と、観光路線としての活性化策を探る。南三陸ホテル観洋(宮城県南三陸町)でおかみを務める阿部憲子取締役も「バスでも鉄道でもない特色をアピールしてほしい」と期待を込める。
 さらなる利便性向上に向け、JR東は9月5日、専用道を新設する=地図=。専用道の比率は現在の21%から39%に高まる。将来的に専用道比率を7割程度に引き上げる方針を掲げるが、鉄路復旧を望む地元では、BRTの固定化を懸念する声が強まっている。
 菅原茂気仙沼市長は「BRTは仮の姿であり、ゴールではない」と明言。佐藤仁南三陸町長は「(被災程度が小さい)柳津−陸前戸倉駅間の鉄路早期開通を」と訴える。
 JR東は今月7日、被災線区の復旧には計約12キロでルート移設が必要になるとの整備案を示した。数百億円と見られる工費への公的支援の枠組みも定まってはおらず、鉄路再開の時期は不透明感を増している。
 周辺では「復興道路」として三陸自動車道の整備が加速するなど、交通環境が大きく変わることも想定される。菅原市長は「移設ルートを細かく詰めて費用を試算し、JRが負担できない金額について国に財政支援を要望したい」と話している。


2013年08月21日水曜日


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