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7 人中、4人の方が、「このレビューが参考になった」と投票しています。
5つ星のうち 5.0
期待を超える熱戦, 2012/11/20
第一巻があまりにもすごすぎたので、どう続けるのか、パワーダウンは否めないのではないか、と心配しながら読みましたが、まったく杞憂でした。 まずは、歴史改変ものとしての魅力が大幅に増強されています。ついに登場したナポレオンは「そうきたか」という感じのキャラクター造形で、世界の謎を一気に深めてくれました。また、ナポレオンの設定に、作者の強みである音楽の知識(今回はピアノの発展がテーマでした)をからめ、さらに物語全体のテーマである芸術論まで一本化して語るあたり、構成の妙にうならされます。 コメディとしても、どこかで見たようなにぎやかな連中が登場してさらに笑いどころが増え、ルゥとメフィの両ヒロインの可愛さもますます加速しています。残念だったのは三人目のヒロイン(?)であるウェーバーのカラーイラストがなかったこと!岸田メル氏が忙しかったのでしょうか、折り込みの片面も前巻の使い回しでちょっと残念でした。 三巻を正座して待ちたいと思います。
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7 人中、4人の方が、「このレビューが参考になった」と投票しています。
5つ星のうち 5.0
贅沢すぎる幕開け, 2012/11/20
まさにこの作者にしか書けない世界、キャラクター、そして物語だといえるでしょう。 大傑作『さよならピアノソナタ』ですべて書ききったかに見えた音楽という題材を、まさかこんな形で再び描くとは、いったいだれが予想できたでしょうか。音楽への情熱と描写の濃密さ、知識の深さは健在で、今作ではそこにさらに歴史というもうひとつの魅力が加わります。さらに主人公に据えたのはあの文豪ゲーテ。およそライトノベルらしからぬ素材ばかりをとりそろえながら、お得意のとぼけた人物造形と抱腹絶倒のコントとで味付けし、見事なライトノベルに仕上げる手腕は感服する他ありません。 最後の一行に向けての周到な伏線も、ミステリを多数手がけてきた作者ならではのもので、息もつかせず物語に巻き込み、笑わせ、泣かせてくれます。しかもこの分厚く濃い一冊が、まだ序章とは!なんという贅沢なオープニングでしょうか。 今最も続きが楽しみなシリーズです。
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13 人中、4人の方が、「このレビューが参考になった」と投票しています。
5つ星のうち 5.0
技巧が冴え渡る正統派コメディ, 2011/12/10
美少女だらけの生徒会に強引に加入させられるという、この作者としてはかえって珍しいラノベらしさ全開の作品です。いつもながらの鈍感主人公が可愛いヒロインに囲まれてボケにツッコミを入れつつどたばたをするだけの話なのですが、読んで受ける印象は「無難」ではなく、「非凡」につきます。イラストも含めてすべてがハイレベルなエンターテイメントに仕上がっています。 「探偵」についても触れておきます。他の方のレビューにもある通り、ミステリ要素はかなり薄く、探偵らしいことをする部分はあまりないのですが、この作品ではしかしヒロインの探偵という属性を実に見事にクライマックスの演出に用いています。キリカは生徒会会計で裏の顔として探偵をやっているのですが、この構図は最終話で逆転するのです(文字通り!)。この一冊を、ただの連作短編でも、キャラ紹介のための散漫なエピソードの羅列でもなく、一本芯の通った長編に仕立て上げているのはやはり生徒会探偵という設定なのです。あらためて作者の技巧に舌を巻きます。 キャラは豪華絢爛の一言、生徒会長の野望など魅力的な伏線も多数残されていて、続刊が非常に楽しみなシリーズです。
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23 人中、17人の方が、「このレビューが参考になった」と投票しています。
5つ星のうち 5.0
終局に向けて加速する切なさ, 2011/9/13
前巻から二ヶ月という、このシリーズとしては異例の早さで刊行されたこの巻は、いつになく「終わり」を予感させるものでした。もともとこの作者は続き物のシリーズであっても一冊一冊の締めをきっちりとつくる傾向があるのですが、それとは別に、この8巻は1巻と3巻で語られたシリーズの根幹を成す最重要エピソードが一年を経て語り直され、完結させられます。短編集の形態をとりながら、大きな流れを感じさせる見事な構成は、同作者の『さよならピアノソナタ3』を思わせます。 これまでの巻で、彩夏のファンはさぞかしやきもきしていたことでしょう。ヒロインの一人として登場しながら、もはやメインの座は完全にアリスに奪われ、普通の女子高生であるがゆえに血なまぐさい事件が続くと物語の表舞台からは遠ざけられてしまうために出番も少ない。けれどこのシリーズは暴力や犯罪が吹き荒れる世界を描くだけのしろものではありません。彩夏の象徴する、優しくて暖かでささやかな世界もまた、神メモの大切な構成要素なのだと、強く印象づけられた巻でした。同時に、人気キャラの四代目についてもかなり掘り下げられた巻となっており、それらがすべて結実し、同時にエンジェル・フィックス事件の幕引きとなるラストシーンは、1巻のそれに匹敵する映像美を備えています。 語り残されていたことはこの8巻でほとんど昇華されました。おそらく、シリーズは終わりに向けて動き始めたのでしょう。一抹の寂しさを感じつつも、この素晴らしいシリーズが最終的にどこへ向かうのか、楽しみに待ちたいと思います。
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17 人中、15人の方が、「このレビューが参考になった」と投票しています。
5つ星のうち 5.0
なんと幸福な再演, 2011/7/28
大好きな作品の漫画化ということで・・・そして電撃系のコミカライズは正直あまり質がよくないものが多いので、不安七割期待三割でしたが、見事に良い方に裏切ってくれました。絵柄が可愛いのはもちろんですが、この漫画家さん、コマを贅沢に使った演出力に非常に長けています。演奏時の描写も、まだこの一巻の段階ではアンサンブルのシーンがひとつもないのですが、十分にこの先を期待できるできばえです。作画担当も編集者もどうやら原作の大ファンだったそうで、幸運な組み合わせが実現したのでしょう。千晶の可愛さは原作を超えていると思います。 非常にたっぷりと丁寧にほぼ原作通りのエピソードをたどっているので、おそらく単行本三冊で原作一巻を再演するペースでしょう。その先があるのかどうかわかりませんが、短くまとまった原作ですので、このままのクォリティで漫画も最後まで駆け抜けてほしいものです。
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15 人中、8人の方が、「このレビューが参考になった」と投票しています。
5つ星のうち 5.0
「家」を失った人々の物語, 2011/7/17
この作者はひとつのキーワードを作中で重層的に扱い、言霊を高めていくという手法に非常に長けているのですが、今回のキーワードはエピグラフにもプロローグにもあるとおり「家」です。「ホームレス」という存在を、汚れとして忌避することもなければ弱者として同情することもなく、このような視点で描いたことにまず驚かされます。それにしてもライトノベルで(しかもアニメ化するほどの人気シリーズで)まさかホームレスの本質に迫る小説が登場しようとは。 それと同時にこの7巻ではこれまで奇妙なサブキャラクターという立ち位置を外さなかった少佐にはじめてスポットライトが当てられ、その闇が映し出されます。これほど異常な事件、切実な背景にあって、しかし少佐が少佐らしく最後まで行動し続けたその人物描写には、作者のキャラクターへのたしかな理解と愛情が感じられます。 またゲストキャラのアイドル・ユイも魅力的で、ナルミの無意識ジゴロっぷりとアリスの可愛らしい嫉妬も磨きがかかっています。ユイにはぜひ再登場してまたアリスをやきもきさせてほしいものです。 最後に、この巻は作者が「毛色が違う」と言っている通り、これまでになくいわゆるジャンルフィクション的な「ミステリ」の様相を呈しています。正直、そのページが訪れたときはかなり驚きました。まさかこのシリーズで、という驚愕の事件は、数々のキャラクターの思惑をすべて呑み込んで最終的に見事な収束を見せます。作者の技巧のたしかさを見せつけられる一冊です。
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19 人中、10人の方が、「このレビューが参考になった」と投票しています。
5つ星のうち 5.0
言い尽くせない余韻を残す恋物語, 2011/4/18
これほど単純なプロットとありふれた設定を用いながら、凄みさえ感じさせる哀しいラブストーリーに仕上がっています。おそらく物語は読者の予想から一歩も出ないままラストまでたどり着くでしょう。しかしそれゆえに、海を前にしたラストシーンの美しさは胸を打ちます。 極論すれば、この小説は「だれもなにもしない、どこにも進まない、なにも解決されない」物語です。それなのに、主人公とヒロインの想い、それぞれの選択は、強く胸に残ります。文章の魔力という他なく、作者の描写力にあらためて舌を巻きます。独自設定として主人公がアマチュア写真家であり、それを用いた展開もいくつかあるのですが、この作者らしく音楽もやはり重要な要素として登場します。 強くおすすめできる一冊です。静謐な終末の世界に深く没頭できることを約束します。
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3 人中、2人の方が、「このレビューが参考になった」と投票しています。
5つ星のうち 5.0
新境地を開く凄絶な一冊, 2011/4/18
いわゆる一般向けの小説としては、この作者初のものになるのでしょう。 とにかくすごいとしか言えない一冊です。なんの予備知識も持たずに読んでください。レビューおしまい。 ではあんまりなので、ネタバレにならない程度にもう少し書きます。 非常に思索的な小説なのですが、興味深いのは「愛」についての文章よりも「宗教」の解釈の方です。作中で老神父と交わされる「信仰とはなにか」についての問答は、非常に本質的に宗教というものを捉えており、「神様のメモ帳」でも似た考え方が出てくるのでおそらくは作者自身の宗教観なのでしょう。 示唆に富んだ文章で埋め尽くされた、非常に短い物語です。おそらくこの作者は今後、一般文芸へと活躍の場を広げていくのでしょうが、重要なメルクマールとなる一冊です。いつか、もっと別の形で評価されてほしいのですが・・・
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2 人中、1人の方が、「このレビューが参考になった」と投票しています。
5つ星のうち 5.0
はかなく美しい戦争物語, 2011/4/18
この作者は、ある一つのテーマなり素材なりを一作の中で徹底して使い尽くすやり方に長けているのですが、それにしてもこの「花咲けるエリアルフォース」における「桜」の描ききり方は鳥肌が立つほどです。絶滅したソメイヨシノが靖国神社にだけ時間を停止させて残っているという設定からしてすさまじいのですが、戦争と皇室とオーバーテクノロジー戦闘機と桜というそれぞれの要素が、「使いたかったから入れてみた」という風ではなく、どれも強い有機的なつながりをもって物語に組み込まれています。全体的に見て、グロテスクなまでの美しさを持つ一冊です。 しかし、それを重たさと暗さだけに終わらせないバランス感覚もまたこの作者一流のものです。これまでの作品で何度も使ってきたキャラクター類型ではありますが、とにかくヒロイン勢がみんな可愛い! その可愛さを共通して裏で支えているのが「強さと脆さ」であるところも、この作者らしい点です。 ラストに至るまでの怒濤の展開は、悲劇の中に一片の救いを見せるこの作者の真骨頂でしょう。劇場版アニメで見てみたい、そして続編を、と祈ります。
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8 人中、6人の方が、「このレビューが参考になった」と投票しています。
5つ星のうち 5.0
音楽小説の一つの到達点, 2011/4/18
読み終わってしまうのが寂しい、という気持ちを、まさかシリーズで二度も味わわされるとは思っていませんでした! 完結から一年、出るわけないだろうと思っていたタイミングで発売された短編集です。アニメ化されたような人気シリーズならば、完結後に読者サービス的な意味合いの短編集が出るのが常道なのですが、この"encore pieces"はそういった軽い位置づけのものではありません。読んでいただければわかるでしょう、「さよならピアノソナタ」シリーズの正統な完結編であり、また、断言してしまいますが作者の最高傑作です。 それにしても、短編集に帯する「珠玉の」という常套句がこれほどまでにふさわしい一冊はないのではないでしょうか。ナオ、真冬、千晶、ユーリ、神楽坂先輩、過去から未来に至るまで読者が読みたいと切に願っていた様々なエピソードを絶妙な切り取り方で見せる手腕には感嘆してしまいます。特にすごいのが第二話「翼に名前がないなら」です。千晶の話に相当する一編なのですが、なんとここにきて新キャラ登場で主人公を任せ、外側からフェケテリコを描くという手を使ってくるのです。ナオを一度も登場させないまま存在感を高める見事な描き方です。 また、短編の並べ方も秀逸です。作者はあとがきで茶化していますが、だんだんと過去に遡っていくこの構成はおそらく狙って書いたものでしょう。最も重たく哀しい神楽坂先輩の過去エピソードの後に、わずか十数ページの哲朗の掌編が置かれて、このシリーズは正真正銘の完結を迎えます。他のどんな並べ方をしても、ここまで胸に残る読後感は醸し出せなかったのではないかと思います。 正直なところ、この巻は「さよならピアノソナタ5」とナンバリングしてもまったく違和感のない一冊です。蛇足な短編集であることを警戒して四巻でやめている読者もいるのではないでしょうか。しかし読めば読むほど、「アンコール曲集」というタイトルはこの一冊にぴったりで、悩ましいところです。 繰り返しますが、この一冊で本当に完結です。ぜひ読むことをおすすめします。
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