そこが聞きたい:公立図書館の民間委託 樋渡啓祐氏
毎日新聞 2013年08月28日 東京朝刊
◇固定観念破り、街の核に−−佐賀県武雄市長・樋渡啓祐氏
佐賀県武雄市は4月、市立図書館の運営をレンタルビデオ大手「TSUTAYA(ツタヤ)」を手掛けるカルチュア・コンビニエンス・クラブ(CCC)=本社・東京=に委託。年中無休の図書館は盛況だ。仕掛け人の樋渡啓祐市長に聞いた。【聞き手・渡部正隆、田中韻、写真・野田武】
−−CCCは4600万人が加入する共通ポイントカード「Tカード」も運営しますが、公立図書館の運営実績はありません。なぜ運営を依頼したのですか。
私自身が図書館のヘビーユーザーで、7年前に市長になり、執務後に図書館を利用しようと思いましたが、閉館して使えませんでした。一方、ツタヤ武雄店は年中無休で夜中も営業。「何でツタヤのようにできないのか」と職員にはっぱをかけました。市教委も努力してくれて年間95日あった休館日を34日に減らし、開館時間も一部延長してくれました。しかし、担当者が来て「これが限界です。これ以上は人件費が膨らみます」と言う。「ああ教育委員会に負けました」と白旗を掲げました。
−−図書館改革を一旦は断念したわけですね。
2011年12月のことでしたが、その数日後、民放のテレビ番組を見ていたら、代官山蔦屋(つたや)書店(東京)を取り上げ、CCCの増田宗昭社長が出演されていました。この番組で自分の間違いに気付きました。公務員に「ツタヤのようにやれ」と言うのは元々、無理なんだと。そこで、アポを取って昨年1月、代官山蔦屋書店に行きました。増田社長がたまたま歩道に出ておられ、私が「うちの図書館をお任せしたい」と言ったら、社長は「承りました」と即答です。びっくりですよ。トップ同士の合意があったので、後の展開は早かったです。
−−昨年5月にプロジェクトを発表し、開館までの1年間は「公立図書館の目的を逸脱している」などと批判の嵐でした。
私は武雄のような地方都市にとっては「無関心が最大の悪」だと思っています。批判は世間の関心の表れだから、大歓迎ですよ。それにこのプロジェクトにはあえて地雷を埋め込みました。だってTカードで公立図書館の本が借りられるなんて絶対におかしいでしょう=1。
−−開館すると大盛況だった。