飲酒検査身代わり プロの不正に市民憤慨 [福岡県]
福岡市東区で幼いきょうだい3人が亡くなった飲酒運転事故から7年を迎えた25日、西鉄観光バスの運転手による“身代わり”飲酒検査が明らかになった。乗客の命を預かり、仕事でハンドルを握るプロの運転手による不正行為に、市民からは「県民を挙げて飲酒運転の撲滅に取り組んでいるのに、がっかりだ」と怒りの声が上がった。
「悪質な手口で、誠に遺憾。利用客も県民の皆さんも裏切ったような行為だ」。25日、福岡市の西鉄観光バス本社で記者会見に臨んだ安田堅太郎社長は、厳しい表情でこう語った。不正行為が発覚した運転手は酒気が残った状態で運転したとみられ、同社は真相究明のため、全運転手125人への聞き取り調査を実施。安田社長は「全力を挙げて信頼を回復していきたい」と話し、頭を下げた。
西鉄グループで飲酒検査の“身代わり”が発覚したのは今回が初めてではない。西鉄バス佐賀の鳥栖支社で2005年5月、「前日に少しお酒を飲んだ」と申告した女性運転手の代わりに管理者が検査を受け、女性運転手がそのままバスを運転。06年8月には、西鉄天神大牟田線の男性運転士が同僚の車掌にアルコール検査を受けさせ、酒気帯びの状態で乗務したことが判明した。西鉄グループは同年10月、再発防止策を九州運輸局に提出し、運転士らを懲戒解雇、鉄道事業の担当役員を減給処分にした。
それでも繰り返された飲酒検査の不正行為。この日は、福岡市中央区の市役所前広場で飲酒運転の撲滅を目指す「市民の集い」が開かれ、多くの市民が参加していた。「乗客の命を預かる運転手の意識の低さにあきれてものが言えない。怒りを通り越してがっかりする」と話したのは福岡県粕屋町の主婦(41)。博多高校(福岡市東区)の教諭(29)も「飲酒運転が罪だということは、かなり浸透しているはずなのに…。仕事で運転をする人がこういうことをするのは問題外。7年前に3児死亡事故が起きた大事な日にこんなことを耳にし、力が抜けた」と語気を強めた。
=2013/08/26付 西日本新聞朝刊=