はだしのゲン:増刷続々 閲覧制限問題で関心高まる
毎日新聞 2013年08月27日 12時08分(最終更新 08月27日 12時54分)
松江市教委による小中学校での閲覧制限が議論になった漫画「はだしのゲン」が各地の書店で品薄になり、出版する2社が急きょ増刷を決めた。作者の中沢啓治さんの死去後、初めての夏でもあり、改めて人気を集めているようだ。
汐文(ちょうぶん)社(東京都文京区)はゲンを累計1000万部販売してきた。昨年12月に中沢さんが死去した後、作品を紹介する報道も多く、今夏は全10巻を例年の3倍となる各7000部増刷した。例年、終戦記念日以降は売れ行きが落ち着くが、今年は8月後半になっても注文が続き、23日に各巻2000部の増刷を決めた。
松江市教委の対応を受けて同社には「事実を覆い隠すような対応はおかしい」「子供に読んでもらいたい」など作品を評価する意見が約100件寄せられた。政門一芳社長は「市教委の問題が報道されて注文が続き、皮肉な形だが関心が高まった。多くの人に読んでもらえること自体はありがたい」としている。
文庫版と愛蔵版を発行する中央公論新社(東京都中央区)も今夏は例年の2.5倍の売れ行き。8月後半も注文が続き、文庫本全7巻を1万部ずつ増刷する。
JR東京駅前にある「丸善丸の内本店」の担当者によると、ゲンはこれまでも夏場を中心に年間を通じてコンスタントに売れる定番作品だった。各巻3冊程度の在庫を用意しておく販売態勢をとっていたが、現在は在庫がなくなり、入荷待ちの状態。「松江の件で全国的に関心が高まっているので多めに発注しているが、同様に他書店からも注文が殺到しているようで、すぐに入ってこない」と話す。
電子書籍を扱うイーブックイニシアティブジャパン(東京都千代田区)では、ゲンの売れ行きが「これまでにないほど好調」。コミックを中心に約15万冊を扱う中、タイトル別の8月売り上げでトップ10入りする勢いという。【山田奈緒、川口裕之】