飲酒運転:検知ロック普及進まず 3児死亡事故から7年
毎日新聞 2013年08月24日 08時30分
運転手の息から基準値以上のアルコールが検知されると車のエンジンがかからなくなる装置「アルコール・インターロック」。欧米では飲酒運転の検挙者に対し利用を義務づけている国もある。国内では2006年8月に福岡市で飲酒運転による追突で幼い3きょうだいが亡くなった事故を受け、国が普及に向けた検討を開始。運送業者やバス会社が導入し始めたが、高額な費用がネックになっている。25日で3児死亡事故から7年。運送業界の取り組みを追った。【尾垣和幸】
「息を吹きかけてください」。熊本市北区の運送会社「熊本通運」の運転手、吉田真(まこと)さん(43)がトラックの運転席でインターロックの電源を入れると自動音声が流れた。装置から伸びるホースをくわえ、10秒間息を吐く。モニターに「0・000mg」の表示。キーを回すとエンジンが始動した。その間約2分。吉田さんは「発進に時間がかかるけど、もう慣れましたね」と笑った。
インターロック搭載車は、呼気1リットルあたり0・05ミリグラム以上のアルコールが検出されるとエンジンがかからない。熊本通運は11年5月に導入を始め、搭載車は保有トラック80台のうち9台だ。
きっかけは1999年11月、東京都の東名高速道路で飲酒運転のトラックが乗用車に衝突し、女児2人が犠牲になった事故だった。同社営業所長の岡田一文さん(49)がたまたま仕事でこのトラックの約100メートル後ろを走っていた。「あんな悲惨な事故はうちでは絶対起こさせない」。その後インターロックを知り、当時の社長に導入を持ちかけた。
吉原達(とおる)社長(52)は「これまでは出発前にアルコールチェックをしても出張先で飲んでしまうドライバーが少なくなかったが、みんな一切飲まなくなった」と効果を語る。
国内で唯一のインターロックメーカー、東海電子(静岡県富士市)によると、2009年9月の販売開始以降、飲酒運転防止によるイメージアップなどを見込んだ運送会社やバス会社から注文が相次ぎ、現在は全国で1100台以上に搭載されているという。
飲酒運転根絶の機運の高まりを受け、国土交通省は09年にインターロックの普及に向けた検討委員会を設置。昨年、装置の耐久性や測定精度に関するメーカー向けの技術指針を策定した。