広辞苑:「那智黒」で誤った記述
毎日新聞 2013年08月27日 18時45分(最終更新 08月27日 22時33分)
広辞苑が黒色の硬質な粘板岩「那智黒(なちぐろ)」について、三重県熊野市産にもかかわらず、「和歌山県那智地方に産出」と、誤った記述をしていることが熊野市への取材で分かった。市によると、那智黒は碁石やすずりの原料として知られ、これまでに那智地方で採掘されたことはないという。岩波書店(東京都)の広辞苑編集部は「次回の改訂版では、専門家の意見を聞きながら修正を含め検討したい」としている。
熊野市教委によると、「那智黒石」とも呼ばれ、同市神川町周辺で採石。アクセサリー類にも加工され、熊野古道の巡礼者らの土産品として販売されている。明治期以降、土産としての需要が高まり、和歌山県那智勝浦町の「熊野那智大社」周辺でも販売されていたことから混同した可能性があるという。
熊野市が1997年ごろ、広辞苑など184種類の辞書や事典を調べたところ、38種類で誤りが見つかり、出版各社に文書で申し入れていた。大半の出版社が表記の誤りを認め、「次回に直す」などと回答していた。しかし、広辞苑は訂正されていなかった。その理由について、広辞苑編集部は「当時の経緯を知る担当者が不在で理由は分からない」としている。【行方一男】