漫画「はだしのゲン」の閲覧制限は、松江市教育委員会事務局の手続きに不備があったという理由で撤回された。同市内の小中学校の図書室から「ゲン」が消えるまでに何があったのか、検証した。
ゲン「過激描写」貫いた思い■市教委、「重要な教材」から一転
「子どもに間違った歴史認識を植え付ける」
松江市教委が「ゲン」について「対応」を始めたのは、昨年4〜5月、当時市内在住の自営業男性(35)が3回にわたり市教委を訪れ、小中学校の図書館からゲンを撤去するようしつこく求めたことだった。
うち1回は、京都市の朝鮮学校の授業を街宣活動で妨害した事件で有罪判決を受けた「在日特権を許さない市民の会」の元幹部らが同行。男性らはその様子を動画投稿サイトに投稿し、それを見た人たちから市教委に抗議電話が殺到するなど、「一時は業務がマヒ状態になった」(教育総務課長)。
だが、この時点では市教委事務局にゲンを問題視する考え方はなかったという。「はだしのゲンは平和学習の重要な教材であり、外部の圧力から守ることで一致していた」(当時の教育長)。市教委は警察にも対応を相談していた。