あんまりこういう話に首を突っ込むのはアレですが、わかりやすい話なので事例として取り上げておきます。
匿名は人をダークサイドに陥れる
「mamononews」というアカウント。匿名の立場で、クラウドワークスとumeki氏に詰問を繰り出します(参考:クラウドワークス社長にケンカを売るマモノ氏(@mamononews)がやたら偉そうな件)。
梅木(@umekida)吉田(@yoshidaCW)よく読んでおけよ。競合貶すマーケティングなんかしてんじゃねーぞ。あとクラウドワークスのBOTうざい→「ランサーズの質は決して低くない」と僕が考える理由 – NAVER まとめ http://t.co/NkwPQU6ixy
— マモノ (@mamononews) August 23, 2013
@yoshidaCW @goodfreedom7 俺の質問に箇条での答えて無いって事は俺は舐められてるって事で良いかな?
— マモノ (@mamononews) August 23, 2013
@yoshidaCW @goodfreedom7 あと、くだらない実名主義なら、俺も匿名としてそれなりの動きすんよ?
— マモノ (@mamononews) August 23, 2013
しかし、どこからかこの人の素性が明かされ、結局謝罪に至ります。「吉田」から「吉田様」とは、もはや滑稽な変貌ですね。
@yoshidaCW 吉田様、先程は本当に暖かい気持ちで拙い謝罪を受け取って頂きありがとうございます。武田様、高橋様に謝罪後、お約束しました通り匿名アカウントを破棄します。本当に申し訳ございませんでした。
— マモノ (@mamononews) August 27, 2013
似たような話で、こんな事件があったようです。2chの個人情報が流出し、誹謗中傷を行っているユーザーが特定されつつあるようです。
テレビアニメ化もされたライトノベル「神様のメモ帳」などで知られる作家・杉井光が、インターネット掲示板上に暴言や誹謗(ひぼう)中傷を多数書き込んでいたとして謝罪した。大手掲示板「2ちゃんねる」の専用ビューア「2ちゃんねるビューア」から個人情報が流出したことで杉井の行動が発覚し、ファンの間でも話題になっていた。
匿名アカウントの実名がバレて、謝罪に至るというのは、割合でいうと相当希有な話だと思います。普通、誹謗中傷を受けた側は泣き寝入りですからね。
当たり前のことですが、「身バレして謝罪するくらいなら、そもそも書くな」という最低限の倫理をここから導き出すことができます。本気で問題提起するのなら、実名でやればいい話ですからね。どうしても身を隠す必要があるスパイじゃあるまいし。
善悪感覚は一般人と変わらない
興味深いのは、彼らがある意味で適切な善悪感覚を持っていること。
逆説的ですが、謝罪するということは、彼は「悪いことをしている(していた)」という強い自覚があるということです。誹謗中傷は悪いことだと、彼らは知っているんですね。
しかし、そういう自覚があるのに、悪行に手を付けてしまったのです。ちょうど脱法ドラッグは「悪いこと」だとわかっているけれど、それに手を付けてしまう人のように。
彼らは善悪感覚だけみたら、一般人と同程度だと考えられます。善悪感覚が大きくズレていたら、「わたしのやったこと(誹謗中傷)は悪いことではない」と開き直っているはずですから。
その意味では、「匿名」という仕組みが、彼らをダークサイドに陥れた、と見ることができるでしょう。異常者でも何でもない普通の人たちが、ネットという武器を手にすると、「悪いこと」だとわかっているのに「悪いこと」をしてしまう。
しかも、「悪いこと」にはある種の中毒性があります。彼らがそういう悪行から離脱するのは、そう簡単ではありません。それこそ今回のように、何かのきっかけで仮面が剥がされるでもしないと、自分を変えることはできないでしょう。
今回の件は象徴的ですが、ネットで愚行をするのは若者に限りません。十分に年を重ねた人ですら、社会的な実績がある人ですら、過ちを犯してしまうのです。あらゆる薬物と同じで、自分を律する心が弱い人ほど、こういう魅力に吸い寄せられていくのでしょう。
ぼくはこの種の問題に対して、具体的な解決策を持っていません。なんとももどかしいですが、当座は、インターネット、特に「匿名」という状況は、普通の人を暗い闇に陥れる引力を持っているということを、理解しておくことが大切だと考えます。