8月27日の海外株式・債券・為替・商品市場
(ブルームバーグ):欧米市場の株式、債券、為替、商品相場は次の通り。
◎NY外為:円が全面高、新興市場国通貨の下落で安全性に需要
27日のニューヨーク外国為替市場では円が対ユーロで約8週間ぶりの大幅高。新興市場国通貨が下落し、安全性を求める動きが活発になった。
円は対主要16通貨すべてに対して上昇。スイス・フランは円を除くすべての主要通貨に対して上昇した。ボラティリティーを示す指数が2カ月ぶりの高水準をつけると、ユーロは対ドルでの下げから上昇に転じた。
BNPパリバの通貨ストラテジスト、バシーリ・セレブリアコフ氏(ニューヨーク在勤)は、「政治的なニュースが市場を支配し、リスク回避の動きが強まっているため、G10通貨の中では円やスイス・フランが最も買われている」と述べ、新興市場からの「本格的な資金流出が再開されている兆しがある」と指摘した。
ニューヨーク時間午後5時現在、円は対ユーロで1.3%上昇して1ユーロ=129円96銭。値上がり率は一時、日中ベースで7月3日以来で最大となる1.4%に達した。円は対ドルで1.5%上昇して1ドル=97円03銭。7月10日以来の大幅高となった。ドルは対ユーロで0.2%下げて1ユーロ=1.3393ドル。一時は0.3%上昇した。
ブルームバーグ米ドル指数は0.3%下げて1024.93。8月22日には1031.37と、2日以来の高水準をつけた。
ボラティリティ指数JPモルガン・チェースのG7ボラティリティ指数は10.14%に上昇。7月16日以来の高水準となった。過去12カ月間の平均値は8.93%となっている。
スイス・フランは対ユーロで0.4%高、対ドルでは0.6%値上がりした。
米銀が決済機関デポジトリー・トラスト・アンド・クリアリング(DTCC)へ提出したデータをブルームバーグがまとめたところによると、外為オプションの店頭取引は合計230億ドル。前日は150億ドルだった。対円でのドルのオプション出来高は51億ドルで、シェアは22%と最大だった。
米国と英仏はシリアに対する軍事介入の可能性について協議を進めている。シリアは21日に首都ダマスカス郊外で化学兵器を使用した疑いが持たれている。
米国と英国の当局者が語ったところによると、攻撃に踏み切ったとしても、狭い範囲にとどまり、シリアのアサド政権の打倒が目的ではないとして、シリアの軍事能力の削減に焦点が絞られると指摘した。
DZバンクの為替ストラテジスト、ゾンヤ・マルテン氏(フランクフルト在勤)は「市場参加者が考慮するべきリスク要因は多い」と述べ、「安全への逃避需要は明らかに存在しており、それが円にとってはある程度の支援材料となっている」と続けた。
先進10カ国の通貨で構成されるブルームバーグ相関加重通貨指数によると、円は過去3カ月間で4.9%上昇。ユーロは3.5%上昇。一方、ドルは1.1%下げた。
原題:Yen Climbs as Emerging-Market Currencies Slide; ForintTumbles(抜粋)
◎米国株:S&P500種は6月以来の大幅安、シリア情勢の緊迫化で
米株式 相場は続落。S&P500種株価指数は6月20日以来の大幅安となった。シリアへの軍事攻撃の可能性が高まっていることを嫌気して売りが膨らんだ。8月の米消費者信頼感指数が予想外に上昇したものの、あまり材料視されなかった。
S&P500種株価指数の全10セクターのうち、金融やハイテクの下げが目立った。アメリカン・エキスプレスやマイクロソフトが下げた。石油価格の高騰で燃料コストが膨らむとの懸念からサウスウェスト航空が大幅安。D.R.ホートンも安い。住居用不動産価格の上昇ペースが6月にほぼ横ばいになったことが背景にある。
S&P500種 株価指数は前日比1.6%安の1630.48と、終値ベースでは7月3日以来の安値となった。ダウ工業株30種平均は170.33ドル(1.1%)下げて14776.13ドルで終えた。
ハンティントン・アセット・マネジメント(オハイオ州コロンバス)のランディ・ベイトマン最高投資責任者(CIO)は「市場参加者は情勢を見守っている。これはエスカレートするのかどうか。エネルギー価格が大きく上げれば、最近見られる景気の強さの全てを弱めることになるのかどうか。食料と燃料価格の上昇と同じ時期に住宅価格が上げ始めれば、インフレが加速する可能性があり、金融政策に影響を与えるだろう」と語った。
シリア攻撃前日はケリー米国務長官が化学兵器使用についてシリア政府に責任を負わせると発言したことをきっかけに下げに転じた。
米英仏はこの日、シリアに対する攻撃について法的な正当性を確立するために調整したほか、同国近郊に部隊を配備した。ヘーゲル米国防長官はBBCに対し、米軍の攻撃準備が整っていることを明らかにした。
米当局者の1人が匿名を条件に語ったところによると、地上軍の派遣やシリア上空での飛行禁止区域の設定は検討されていない。
8月の消費者信頼感指数は前月からわずかに上昇。リッチモンド連銀の製造業指数は予想を上回った。
米連邦債務の上限をめぐる民主党と共和党の対立も投資家の注目を集めた。ルー財務長官は議会に宛てた26日付の書簡で、連邦債務が10月半ばに法定上限に達するとの見通しを示した。
ハンティントンのベイトマン氏は「不透明感をさらに高めるものだ」と指摘した。
ルー長官はこの日、債務上限をめぐりオバマ政権は取引には応じないとあらためて表明した。その上で、議会は義務を果たすという米国の「確固たる」公約を順守する必要性を理解しているはずだと述べた。
ベイナー議長は先月、「歳出を真に削減しない限り」、共和党は債務上限を引き上げないと言明している。
移動平均ブルームバーグがまとめたデータによると、S&P500種は100日移動平均を下回った。これは今年に入って2度目。前回、終値ベースで割り込んだのは6月24日。5月の高値から5.8%下げた後、その日に底を打った。
S&P500種は全10セクターが下落。アメリカン・エキスプレスは2.3%安の71.91ドルと、5月14日以来の安値。マイクロソフトは2.6%安と、ダウ平均の構成銘柄で最も下げがきつい。
サウスウェストが3.5%下げるなど、原油高を背景に航空株が下落した。
原題:S&P 500 Drops Most in 9 Weeks Amid Growing Tension OverSyria(抜粋)
◎米国債:4日続伸、シリアの衝突激化懸念で逃避需要-入札は順調
米国債相場は4営業日続伸。シリアでの混乱で軍事衝突が激しさを増すとの懸念から逃避需要が強まった。この日の2年債入札(発行額340億ドル)では、最高落札利回りが市場予想を下回った。
10年債はここ6週間で最長の連続上昇となった。オバマ米政権はシリアに対する限定的な攻撃について法的および政治的な正当性を確立するための調整を進めていると、米政府当局者の1人が述べた。化学兵器使用に対して国際社会として糾弾することが目的だという。2年債入札の最高落札利回りは0.386%、入札直前の市場予想は0.390%だった。
RWプレスプリッチの政府債取引担当マネジングディレクター、ラリー・ミルスタイン氏(ニューヨーク在勤)は「シリアの状況は何らかの行動につながりそうだ。よって安全を求めた買いが米国債に入っている」と分析。「入札はまずまずだった。予想通りの結果となった」と続けた。
ブルームバーグ・ボンド・トレーダーによれば、ニューヨーク時間午後4時59分現在、10年債利回りは前日比8ベーシスポイント(bp、1bp=0.01%)低下の2.71%。利回りの4日連続低下は7月11日以降で最長。同年債(表面利率2.5%、2023年8月)価格は21/32上げて986/32。
既発2年債の利回りは1bp下げて0.36%。
月末要因米政府債のディーラー間ブローカーで最大のICAPによると、米国債の出来高は3226億7000万ドルと、前日の1870億ドルから72.7%増加。年初来の最高は5月22日に付けた6620億ドル。年初来の平均は3130億ドル。
この日は、保有国債のデュレーション(平均残存期間)をベンチマーク(基準)に合わせようとする月末特有の買いも相場を支えた。
ブルームバーグ米国債指数 によると、米国債の年初来リターンはマイナス3.4%。8月だけではマイナス0.9%となっている。
ニューヨーク連銀は債券購入プログラムの一環として、2017年8月から18年5月に償還を迎える米国債52億ドル相当を買い入れた。
2年債入札2年債入札での応札倍率 は3.21倍と、4月以来の高水準。過去10回の入札の平均は3.49倍。
海外の中央銀行を含む間接入札者 の落札全体に占める比率は19.3%と1月以降で最低。過去10回の入札の平均は25.5%。
プライマリーディーラー以外の直接入札者の落札全体に占める比率は26.1%と、4月以降で最大。過去10回の平均は23.8%。
この日の2年債を含め、今週は発行総額980億ドルの入札が実施される。28日には5年債(発行額350億ドル)、29日には7年債(同290億ドル)が行われる。
5年債利回りは1.51%と、約1週間ぶり低水準を付けた。23日には1.72%と、2011年7月以来の高水準を付けていた。
FTNファイナンシャル(テネシー州メンフィス)の機関債調査責任者、ジム・ボーゲル氏は、5年債利回りの妥当な水準は1.52-1.62%との見方を示した。
ボーゲル氏は「入札での落札利回りはこのレンジで落ち着くだろう」とし、「シリア情勢およびその影響に対する世界の反応を受け、投資家の計画は変わってしまっている」と述べた。
原題:Treasuries Rise After Auction as U.S. Syria View FuelsRefuge(抜粋)
◎NY金:大幅反発、3カ月ぶり高値-シリア情勢緊迫で買い優勢
ニューヨーク金先物相場は大幅反発。5月以来の高値となった。シリアをめぐる政治的緊迫が高まったことを背景に、価値保存手段としての金買いが活発になった。
ケリー米国務長官は、シリアが化学兵器を使用した責任を問われるとの見解を示した。金は6月につけた2年10カ月ぶり安値であるオンス当たり1179.40ドルから20%持ち直している。割安感から宝飾品やコイン、延べ棒の需要が増加した。
アーチャー・フィナンシャルのシニア市場ストラテジスト、アダム・クロフェンシュタイン氏(シカゴ在勤)は電話取材で、「シリアは金にとって新たな強材料だ」と指摘。「金への関心が再び高まっている」と述べた。
ニューヨーク商業取引所(NYMEX)COMEX部門の金先物12月限は前日比1.9%高の1オンス=1420.20ドルで終了。15日以来の大幅上昇となった。一時は1424ドルと、中心限月としては5月15日以来の高値をつけた。
原題:Gold Futures Rise to Highest Since May in N.Y. on SyrianTension(抜粋)
◎NY原油:急反発、対シリア攻撃の観測で中東供給に不安
ニューヨーク原油先物相場は急反発。シリア情勢の緊張で中東からの原油供給が滞る恐れがあるとの見方から、1年半ぶりの高値に達した。
シリアのムアレム外相は27日、米国やその同盟国が軍事行動に出た場合、シリア軍の防衛力に「驚く」だろうと語った。ロイター通信が複数の関係者を引用して報じたところによると、西側諸国は数日内にアサド大統領の政府軍を攻撃する用意があると、シリアの反政府勢力に伝えた。
BNPパリバの商品市場戦略責任者、ハリー・チリンギリアン氏(ロンドン在勤)は「シリアの地政学的緊張は確実に一段階高まった。その幅は非常に大きい」と述べた。「問題はシリア紛争の拡大が中東全域の主要供給源にどう影響するかだ。とりあえずロングにしておいて、次の展開を待つというのが市場の姿勢だ」と続けた。
ニューヨーク商業取引所(NYMEX)の原油先物10月限は前日比3.09ドル(2.91%)高の1バレル=109.01ドルで終了。終値としては2012年2月24日以来の高値。値上がり率は5月2日以来で最大。
原題:Crude Rises to 18-Month High on Escalating Tension inSyria(抜粋)
◎欧州株:9週ぶり大幅安、シリア情勢で-自動車株安い
27日の欧州株式 相場は下落。指標のストックス欧州600指数は9週間ぶりの大幅安となった。自国民に対する化学兵器の使用でシリア政府は責任を問われると、ケリー米国務長官が発言したことが手掛かり。
自動車株指数は業種別19指数の中で最もきつい値下がり。フランスのルノーとドイツのポルシェが大きく下げた。銀行株指数では全銘柄が売られた。国債利回りの上昇を背景に、イタリアとスペインの銀行株の下げが目立った。
ストックス欧州600指数 は前日比1.8%安の299.01で終了。欧州中央銀行(ECB)が長期にわたり低金利を維持する方針を示したことから、年初来安値を付けた6月24日以来では8.5%上げている。
PFAペンション(コペンハーゲン)のシニアストラテジスト、ウィトルド・バーク氏は電子メールで、「ケリー長官の発言でシリアをめぐる情勢が緊迫化し、悪影響が地域全体に及ぶとの懸念が高まった。これが投資家のセンチメントを揺さぶった」と指摘。「政策リスクが最重要の問題で、向こう数週間はリスクイベントがどこに潜んでいるか分からない困難な状況になるのだろう」との見方を示した。
ケリー国務長官は26日、欧州での市場取引終了後にワシントンで、化学兵器の使用は「倫理に反する卑劣な行為」だとし、シリアのアサド政権に対する対応が必要だと語った。
27日の西欧市場では主要株価指数が全て下落。独DAX指数は2.3%、仏CAC40指数は2.4%それぞれ下げた。ギリシャのアテネ総合指数は4.1%の大幅安となった。
原題:European Stocks Drop Most in Nine Weeksas Syria Tension Mounts(抜粋)
◎欧州債:イタリア債3日続落、政権持続への不安で-英独債上昇
欧州債市場ではイタリア国債が3営業日続落した。ベルルスコーニ元首相の政治生命に関する協議次第では連立政権が崩壊しかねないとの懸念が広がった。
イタリア10年債利回りは4週間ぶりの高水準 に達した。同国はこの日、ゼロクーポン債とインフレ連動債を計39億8000万ユーロ発行した。今週はこれを含め、計185億ユーロ相当を発行する予定。イタリア上院はベルルスコーニ元首相の議員資格剥奪に関する手続きを来月始める。一方、ドイツ国債は上昇。シリアをめぐる緊張が高まっているため、域内で最も安全とされるドイツ国債を求める動きが強まった。
クレディ・アグリコルCIBの債券ストラテジスト、オーランド・グリーン氏(ロンドン在勤)は、「供給増とイタリア政界の混乱に関して、市場では若干の警戒感が出ている」とし、「イタリアの連立政権が今年いっぱいは続くとの安心感を市場は求めている」と語った。
ロンドン時間午後4時30分現在、イタリア10年債利回りは前日比7ベーシスポイント(bp、1bp=0.01%)上昇の4.45%。先月30日以来の高水準となる4.46%を付ける場面もあった。同国債(表面利率4.5%、2023年5月償還)価格はこの日、0.545下げ100.75。
レッタ首相と不動産税の変更に関する話し合いが進む中、ベルルスコーニ元首相は前日、同氏率いる政党に対し公での発言を控えるよう指示した。28日の閣議では財政が議題となっており、ベルルスコーニ氏の政治生命をめぐる駆け引きの前哨戦となる可能性がある。
ドイツ10年債利回りは前日比5bp低下の1.85%。23日には1.98%と、2012年3月22日以来の高水準に達していた。
英国債英国債相場は上昇し、10年債利回りは11カ月ぶりの大幅低下となった。イングランド銀行(英中央銀行)のカーニー総裁は28日に行う講演で、過去最低となっている政策金利を維持する方針をあらためて示すとの観測が広がった。
10年債利回り はロンドン時間午後4時6分現在、前営業日比12bp低下の2.60%。これは12年9月26日以来の大きな下げ。同国債(表面利率1.75%、2022年9月償還)価格はこの日、0.895上昇し93.20となった。2年債利回りは6bp低下し0.40%。
原題:Italy’s Bonds Decline Third Day onCoalition Concern; Bunds Rise(抜粋)Gilt Yields Fall Most in 11 Months BeforeCarney; Pound Weakens(抜粋)
更新日時: 2013/08/28 06:55 JST