そろそろ順位に一喜一憂するのは卒業したい。6回目になる全国学力調査の結果をみて、そういう思いを深くする。毎度ランキングが注目を集めるが、実は都道府県の成績に大差はない。[記事全文]
お盆の夜、京都府福知山市の花火大会会場で起きた爆発事故は、3人が死亡し、50人以上が重軽傷を負う惨事になった。約80年前に始まった一大イベントで、10万人超が集まる。や[記事全文]
そろそろ順位に一喜一憂するのは卒業したい。6回目になる全国学力調査の結果をみて、そういう思いを深くする。
毎度ランキングが注目を集めるが、実は都道府県の成績に大差はない。ほとんどが平均点前後の狭い範囲に集中している。小学校も中学校も、国語も算数・数学もそれは変わらない。しかも差は年々縮まっている。
わずかな差しかないのなら、細かな順位の違いそのものにこだわることもない。いつも成績のよい県や、ぐんと伸びた県の教え方を学んで手本にする。そちらに力を注ぎたい。
今は都道府県別の成績公表にとどまっている。これを市町村ごとや学校ごとの公表にまで広げるべきか。文部科学省は首長や保護者らにアンケートを配って検討することにした。
これまでは序列化を心配して渋ってきた。しかし、「税金を使う以上、市民には成果を知る権利がある」といった首長や保護者の声に押された。通う小中学校を選べる制度のある地域では、「学校選びの参考になる」という声もある。過去の国の調査では、学校ごとの公表に賛成する保護者が多かった。
しかし、ここは慎重に考えよう。成績が市町村や学校の努力を反映しているとは限らない。
お茶の水女子大が08年度に国の委託で行った調査では、年収の高い家庭の子どもは学力調査の成績がよく、進学塾に通う子はそうでない子より成績がよい傾向がくっきり出た。
県から市、さらに学区と単位を細かく区切るほど、豊かな家庭の集まる地域かどうかの影響は色濃く出る。
ある学校の成績がいいから教え方がいいのかと思いきや、塾に通う子が多いだけだった。そういうことは大いにありうる。逆に、順位は低くても年々上向いているなら、学校の教え方がうまい可能性が高い。
各校の単年度の成績を見てもそういうことはわからない。少なくとも何年か変化を追って成績の伸び具合を示すくらいの工夫をしないと、学校の努力ぶりは見えてこないだろう。
自治体独自の学力調査で学校別の成績を公表した例はある。
あの地域は学力が低い、とネットに書き込まれる。成績を気にして、試験中に先生が生徒に間違いを示唆する。実施した自治体ではそんなことも起きた。
子どもたちの苦手を知り、わかる教え方を工夫するためのテストだ。過去の自分たちと比べてどれだけ伸びたか。ほかの地域や学校との比較より、そこにこだわったほうがいい。
お盆の夜、京都府福知山市の花火大会会場で起きた爆発事故は、3人が死亡し、50人以上が重軽傷を負う惨事になった。
約80年前に始まった一大イベントで、10万人超が集まる。やけどを負った人たちだけでなく、目撃者も心のダメージに苦しんでいる。
屋台の飲食店を出していた男性が、ガソリン携行缶の内圧を下げる作業をしないまま発電機に給油しようとし、噴き出したガソリンに引火した疑いが強まっている。
ガソリンは零下でも気化するほど燃えやすい。高温の夏場はいっそう危険だ。認識が甘すぎたというしかない。改めて注意を呼びかけたい。
携行缶や発電機は、観客が座るスペースに置かれていた。地元の商工会議所を中心とする大会主催者は、露店の配置を露天商の組合に一任していた。発電機や消火設備の有無も把握していなかった。
露店はイベントにつきものだが、各地を巡業する露天商が多いこともあって、店の配置や防火対策は組合任せになっていることが少なくない。
ただ、観客が多く混み合うほど、不注意な火気取り扱いが大事故につながる危険性は増す。電源はできるだけ主催者側が用意し、ガソリンや発電機の持ち込みは規制するなど、今すぐ手をつけられることもある。主催者は露店も含め、会場全体の防火対策に責任をもって取り組むべきだ。
行政によるチェックも強化していくべきだろう。
現在の法令では、露天商らが少量のガソリンを扱う場合、届け出る必要はない。消防活動に支障が出る恐れがあるとして露店に届け出を求める自治体もあるが、福知山市の条例にはそうした規定はなかった。
京都府は先週、露天商らに事前講習を義務づけるなど、法的な火災予防策を充実するよう総務相に要望した。
多くの人が集まり、火気も取り扱うイベントは、消防への事前申請を義務づけ、火気を扱う店の配置や初期消火体制、避難誘導計画などを審査させてはどうか。開催直前に消防職員が会場を見回り、露天商らを直接指導するのも一案だろう。
今回の事故後、すでに多くの消防がイベント会場での指導を強化している。法制化してそれをしっかり定着させることだ。
ガソリン携行缶の事故は一般家庭でも絶えない。使用者が手順を誤っても、噴出を防ぐ工夫ができないものか。国は業界に改良を働きかけていくべきだ。