今季、米女子ゴルフツアー(LPGA)で韓国人選手の活躍が目立つ。全英オープンを含め、18戦中、8試合で韓国選手が優勝。朴仁妃がクラフトナビスコ、全米女子プロとメジャー2勝した。朴仁妃は2008年に全米オープンを制しているため、全英オープンで優勝すれば「グランドスラム」を達成するところだった。
朴仁妃は全英オープンは14位に終わり、グランドスラムは達成できなかったが、優勝した米国人のステーシー・ルイスの「今週は、米国人がスコアボードで注目されたことがとてもうれしい」とのコメントは、意味深長だった。
韓国女子選手が台頭しはじめていた2008年8月、LPGAは「過去2年間ツアーに参加している外国選手に対して、英会話の口頭試験を実施し、能力が十分でないと場合はツアー資格を剥奪する」という方針を決めた。
これが人種差別ととらえられた。カリフォルニア州議会がLPGAを人権侵害で告発する動きが起き、LPGAはわずか2週間後に、この方針を撤回した。
あからさまな韓国女子選手の排除策だ。LPGAがなぜ無謀なことをしようとしたのか。理由は3点ほどある。
(1)リーマンショックで景気が悪く、スポンサー集めに苦労していた
(2)スポンサーは韓国女子選手の活躍が、PRにならないと考えた
(3)韓国女子選手の親族のマナーが悪く、競技の妨げになることもあった
韓国女子ゴルファーはLPGAの“本音”に危機感を感じた。その後、英語習得に取り組み、朴仁妃ら、米ツアーで活躍する選手はほぼ英語で取材対応できる。マナーもよくなった。
LPGAも方針転換した。韓国企業にスポンサーを頼み、アジアでの試合をツアーに取り入れるなど、アジアを「市場」と位置づけた。しかし、韓国女子選手への視線は変わっていないように思う。
昨年ぐらいから、韓国女子ゴルファーの成長過程を浮き彫りにし、「韓国異質論」が言われるようになった。
英雑誌エコノミスト(電子版)は、2012年1月に「自動車の運転免許もとれない14歳の少女が大人も打てないようなショットを打つ」という視点から韓国ゴルフ界を紹介し、「LPGA TODAY」というサイトでは、今年5月に4回にわたり韓国女子ゴルフ界を分析している。
概説すれば、韓国はゴルフに限らず、ジュニア世代から激しい競争社会で、儒教的なバックグラウンドから禁欲的に練習する。米国では奨学金をもらい大学でゴルフを磨く女子ゴルファーが多いが、韓国は国家プロジェクトのような体制を組む。ジュニアからゴルファーのエリート教育を始めている。家族はゴルファー教育を後押しし、子供の収入で生計をたてるという考えを持っている。
つまり、ゴルフで「成り上がる」ということだ。
米国のバスケットボール、野球は人種の坩堝(るつぼ)だが、米女子ゴルフは「成り上がり」とは無縁なイメージで成長してきた。1人や2人の韓国女子選手の奮闘には拍手するだろうが、屋台骨を揺るがす勢いになると牙をむく。
日本の立場からすれば「嫌われ者の韓国女子選手」と嘲笑するわけにはいかない。同様な状況なら、米国は日本選手にも同様の態度を示すだろう。欧米社会は危険を感じるような勢力に対しては、「自由と平等」の仮面を脱ぎ捨てて排除するのだ。(運動部編集委員・村田雅裕)