2013/08/26 12:00

春画:”江戸のクール”と”クールじゃない”今の日本

Photo: 会場風景 by the Courtesy of Sotheby’s, Hong Kong

浦上蒼穹堂主人・浦上満氏との春画をめぐる対話

岩渕:日本では最近のアニメや漫画こそが「クール・ジャパン」を代表するコンテンツのように言われていますが、北斎漫画をはじめとする版画、いわゆる浮世絵や春画は、元祖クール・ジャパンとでもいうべきものの代表ですよね。これらは経産省が何億もの予算をつけて売り込まなくても、今回の大英博物館のように、世界に冠たる美術館や博物館が展覧会を企画してくれるわけで、日本発の最高のコンテンツだと思うのですが?

浦上: 日本の出版における検閲は以前はとても厳しく、あれはいけない、これはいけないということで、黒く塗りつぶされて発行されることもありました。しかしながら、この二十年ほどで印刷物の表現に関する規制はずいぶん緩和されました。春画に関する書籍で規制の対象となるものは、もうありません。それなのに、本ならば良くて、オリジナルの作品は見せてはいけないというのはおかしな話です。しかも、もともと日本で制作された春画を日本に持ち込むなとか、美術館で展示することができないとしたら、納得できませんよね。しかも、誰も「展覧会をしてはいけない」と言ったわけではなく、「何かあったら大変だ」という反応で、こうした日本国内の反応には海外の研究者たちも戸惑っています。

岩渕:美術館は、美術作品を見る目的で訪れる場所ですから、一般的な公共空間である駅やホテルのロビーとは求められる基準は違うはずですよね。しかも、「美術作品」としての説明もきちんとされた上で鑑賞者は春画を見るわけですから、美術館側が予め自主規制的な対応を取ることには納得できません。

浦上:当然、未成年者に見せるべきではないという描写を含む作品はありますから、大英博物館での展示についても入り口で明示されます。日本でも同じように作品の特殊性についての説明をし、未成年者への対応をすれば済むはずです。そして一番大事なのは、春画はどれもが素晴らしいというわけではなく、品のない作品もあります。しかしながら、今回は美術の表現として優れた、品の良い春画だけを選りすぐった展覧会企画なのです。それだけに、かつて文化の一部として享受してきた私たち日本人が日本で見ることができないとしたら、そんな勿体ない話はないと思うのですよね。