<地方在住者の憂鬱(1)>
2009・12・24随分と前から感じてはいたのですが、マンガ・アニメなどの生活を楽しむにおいて、地方だとはなはだ不利なことが多いのではないかと感じるようになりました。以前からそう思ってはいたのですが、インターネットをやり始めて以降、特にここ最近中央(東京)の方へイベントなどで遠征するようになって以降、特にそれを強く感じるようになりました。単純にマンガやアニメを楽しむこともそうですし、あるいはマンガやアニメ関連のイベントへの参加については、さらに大きな不利益をこうむるのではないかと思っています。ここでは、そんな地方における不利な点を、いろいろと個人的な不満の赴くままに書き連ねていきたいと思います。
<TVアニメの放映>
まず、最も分かりやすい問題として、「地方ではTVアニメの多くが映らない」という、昔から語られてきた地方の不利な点があります。東京近辺の首都圏での放映が中心で、あとはせいぜい近畿圏、名古屋圏あたりでしか見られない局が多いのが原因で、これが非常に深刻です。最近では、アニメ専門の局と契約して見たり、インターネットでの配信で見たりと、昔に比べれば地方でも見る方法が増え、少しは改善されているところもあるのですが、しかしそれでもまだ依然として大きな格差が残っています。いや、むしろ今のほうが格差が拡大している傾向もあるのです。そもそも、地方ごとに観られるテレビの局数が違うというのは、非常に大きな問題です。別にアニメだけの問題ではありません。テレビが日本人にとって最大の娯楽・もしくは情報源として認められ、ほとんどの人がテレビを見ているにもかかわらず、この問題がいまだに解消されないのは非常に不可解です。同じテレビを買っていながら、住んでいるところによって見られる番組が違う。これは明らかな地域格差以外の何者でもありません。
そんなテレビの地域格差の中でも、最も顕著なのがアニメの放映でしょう。放映される全アニメのうち、地方では(アニメ専門の局などと契約して見ない限り)、およそ75〜80%は見られないと考えてよいでしょう。この数字は誇張ではありません。実際にほとんどのアニメが放映されないのです。
なぜそこまで地方ではアニメが見られないのか。まず、昔からあるひとつの理由として、テレビ東京系のアニメがまったく見られないことがあります。テレビ東京は、アニメの放映が昔から盛んで、マニアックなコアユーザー向けのアニメも多い。このサイトで扱っているスクエニ系のアニメも、テレビ東京で放映されるものが非常に多い。しかし、テレビ東京系が見られるのは全国でも一部の地域にとどまり、それ以外の地域ではまず見られません。まずこれだけでも非常に大きな地域格差があります。
そして、最近になってこの地域格差を一層大きなものにしているのが、独立U局系のアニメ(UHFアニメ)の拡大です。これも、首都圏(南関東)や一部近畿圏、名古屋圏で見られるのみで、それ以外ではまったく見られない。近年、マニアックな萌えアニメなどでここから放映されるものが非常に増えており、それらがまったくと言っていいほど地方では見られないのです。逆に、東京近辺では、首都圏トライアングルと呼ばれるUHF3局(テレビ埼玉(テレ玉、TVS)・千葉テレビ放送(チバテレ、CTC)・テレビ神奈川(tvk))の3つが同時に見られる地域もあり、その場合アニメ1作品を1週間に3回見られるようなことまであるのです。採算の取れる大都市圏のみで放映し、地方を切り捨てている方針がその根本原因ですが、このUHFアニメの隆盛によりアニメの地域格差はますます増大する結果となりました。
深夜アニメ・UHFアニメの急増による地域格差(ウィキペディア)
では、地方在住者がそれを補うために、アニメ専門チャンネルと契約したり、ネットでの配信を見たりすればよいのではないか? 確かにそれで一部は改善されます。しかし、その格差はまだまだ大きいままであることは変わりありません。
まず、アニメ専門チャンネルですが、見る前に機器の準備が必要だったり、なんといっても毎月の契約料がかかります。そこまでしてアニメを見ようとするのは、一部の本当にアニメが好きなマニアのみでしょう。アニメを見るための敷居が高すぎる。以前、「地方ではアニメが見られないというが、なんでアニメ専門チャンネルで見ないのか」と問われたことがあるのですが、テレビさえあれば簡単に見られる状態と、準備と毎月の契約料が必要な状態とを比較すること自体が、明らかに不公平だと言えるでしょう。しかも、そこまでしてアニメ専門チャンネルと契約しても、すべてのアニメが放映されて見られるわけではありません。ただテレビがあるだけでほぼすべてのアニメが見られる都市圏と、わざわざ準備と費用をかけてそれでもすべてが見られない地方とでは、いまだ大きな格差があることは間違いないでしょう。
同じことはネット配信にも言えます。こちらはまだ手軽な感覚がありますが、テレビに比べれば画質は落ちますし、見るまでに様々な手間もかかります。やはりテレビの気軽さにはかなわない。結局のところ、アニメ専門チャンネルやネット配信を徹底的に駆使したところで、都市圏のアニメ放映地域にはどうしてもかなわないのです。それともうひとつ、ネットを介してのリアルタイムの視聴に乗り遅れるという問題もあります。掲示板やTwitterでアニメの実況的な書き込みがリアルタイムでなされ、すぐにブログに記事がアップされ、その楽しみを同時的に享受できる都市圏在住者と、ネットでの話題にも取り残される地方在住者との隔たりは、ネットがあるがゆえにさらに拡大していると思われます。
<雑誌・コミック・特典が手に入らない(入りづらい)>
アニメだけでなく、マンガでも深刻です。地方の書店では、マイナーな雑誌やコミックが置かれていないことが多く、それが簡単な入手を困難にしています。これは、雑誌においてはとりわけ深刻で、マイナーな雑誌ほど置いてないことが多い。あるいは、地方の特に僻地だと書店そのものが存在しないことも十分に考えられます。
かつて、お家騒動以前のエニックスは、今よりも出版社自体がまだマイナーで、「ガンガンだけはまだ手に入るけれども、WINGは近くの書店にはない」といった書き込みを、ネットのあちこちで見かけた記憶があります。このような状態が続くと、雑誌自体の普及度に著しく影響を及ぼしますし、メジャーな雑誌のマンガばかりが広く知られ、マイナー誌掲載だが優れた作品が知られずに終わってしまうようなケースが続くようになります。
「書店で置いてないのならば注文すればいいのではないか。」という意見もあるかもしれませんが、そもそもめぼしい書店のない場所ではどうしようもありませんし、書店がある場合でも、その格差は解消できていません。上記のアニメの話と同じで、わざわざ注文までしないと買えない状態と、書店に立ち寄るだけで買える状態では、その敷居の高さに非常に大きな差がある。それに、書店で立ち読みして中身を確認して買うということもできませんし、「今月はたまたま内容がよかったから、気が向いたから一号だけ買う」というような気軽な買い方も不可能です。実際、かつてWINGが手に入らないと言っていたネットユーザーの方たちでも、注文してまで買ったという人は1人も見かけませんでした。ないならないで仕方ないで済ませてしまう人が大半なのです。
最近になってつとに増えてきたフェアの特典も、格差を大きく助長させています。このようなフェアは、都市部中心の大規模なチェーン店、それもマニア向けの書店で開かれるケースが圧倒的に多く、地方ではほとんど手に入らないのが現状です。通信販売で手に入れることの出来る書店もありますが、送料がかかりますし、やはり気軽に書店に赴いて購入するのにはかなわない。それに、こういったフェアというものは、書店に行ってその盛り上がりを体感することが大きな醍醐味とも言えるわけで、それが出来ないと魅力は半減してしまいます。
こういったフェア・特典は、あくまでおまけ的な存在なので、別に必要ないと割り切ることも出来るかもしれませんが、しかし掲載雑誌や公式サイトでは大きくページを割いて紹介しているわけで、そういった箇所を目にした読者にとっては、随分と残念な気持ちになるのではないでしょうか。自分が参加できないのに、情報だけは手に入ってしまうというのはつらいものです。
<雑誌・コミックの発売が遅い>
手に入らないのも問題ですが、手に入る場合でも発売日が遅れるというのが、非常に大きな悩みです。
かつては、わたしの住む地域(山口)では、スクエニの雑誌はガンガン以外は2日遅れで、間に日曜が挟まると3日遅れという状態でした。これはあまりにもきついものがあったのですが、いつの頃からか若干改善され、通常1日遅れで間に日曜が挟まると2日遅れになりました。これで少しは緩和されたのですが、しかしこれでもまだ大きな悩みが残ります。そもそも、雑誌の発売日が地方によって遅れるというのが問題。雑誌以外、CDやDVD、ゲームなどの発売が遅れるということはまずないでしょう。雑誌ではない書籍でも、発売が遅れることはありませんし、また、雑誌でも全国一斉発売になっているものもあります(スクエニではガンガン)。そんな中で、雑誌と雑誌扱いのコミックスのほとんどが、いまだ発売が遅れるというのはどういうことなのか。中には即効性を重視して流通が回り次第一刻も早く発売する必要がある雑誌もあるでしょうが、マンガ雑誌のほとんどはそんな必要性はなさそうですし、ましてコミックス(マンガ単行本)ならばなおさらです。他の書籍、CDやDVD、ゲームなどと一体何が違うのか。
最も深刻なのは、やはり間に日曜をまたいで2日遅れになる時です。つまり、本来なら週末に読めるべきところが、週明けの月曜にならないと読めないわけです。ちょっと考えてみても、これがかなり厳しい状態なのは一目瞭然でしょう。週末の休日に楽しく買い物に出かけて、のんびりと時間をかけて読む。それが出来ない。学校や仕事が始まる月曜に買っても、読む時間がしばらく取れないということは十分に考えられます。コミックスならば次の週末まで待って買うということも可能かもしれませんが、雑誌だとさすがに発売日から一週間近く待つのは厳しい。とにかく、本来なら週末に入手できるところが、週明けにならないと手に入らないというのは、地方在住者にとってははなはだ不利益です。
そしてもうひとつ、ここでもネットを介してのリアルタイムでの交流に乗り遅れるという懸念があります。掲示板やTwitterでリアルタイムに雑誌を読んだ報告がなされ、ブログにもすぐに記事がアップされる状態で、自分だけがそれに参加できないというのはつらい。うちの掲示板でも、以前は週末の発売日に買った雑誌についての書き込みが見られましたが、わたしの方は週明けにしか手に入らないのだから、どうにも答えようがありませんでした。
続きは、地方在住者の憂鬱(2)で書いています。