1.はじめに
近鉄、オリックスの合併問題から選手会のストライキまで至った2004年の混乱から、2005年は改革元年と呼ばれた。しかし現状を見る限り、改革の進歩は思ったよりも進んでいないように思える。
そのような中で、今まで極めていい加減であった観客動員について、より正確な統計が取られるようになった。各球団の観客動員数の集計方法は表1の通りである。各球団が集計方法を統一していないことや多くの球団が年間チケットの分を入場の有無に関わらずカウントしていることから、発表された数字が必ずしも実態を正確に反映したものとはいえない。しかしより実態に近くなったことで、球団経営の実態を知る上での新たな資料として利用できると考え、今シーズンの観客動員を集計し、その結果を分析したいと思う。
表1:12球団の観客数の算出方法
(出所) 産経新聞ホームページより
2.2005年の観客動員について
まず、2005年の観客動員をみると、阪神が唯一観客動員総数で300万人を突破した。また、巨人も成績が低迷したとはいえ観客動員総数では300万人近くに達しており、根強い人気があることが伺える。一方パリーグではソフトバンクの観客動員が他球団を大きく引き離しているが、実数は200万人強にとどまった。ここ数年のダイエー時代の観客動員発表は300万人以上であることを考えると、今までの発表と相当な差があることが分かる。他の球団は中日が200万人を突破した以外はどの球団も150万人以下である。今年日本一となったロッテも、観客動員が過去最高とはいえ公式戦の動員は130万人台にとどまった。また横浜、楽天は100万人を割り込んでいる。
セリーグの場合、巨人、阪神といった人気球団があるにもかかわらず、巨人、阪神、中日以外の他球団の観客動員総数はパリーグの平均レベルかそれ以下にとどまっている。つまり、人気球団による動員の効果は限定的であるということが観客動員総数から推察できる。
図2:2005年の観客動員総数
3.プレーオフと交流戦の効果について
次に、観客動員の月別平均を図3に示した。セリーグの動員平均は優勝争いを演じた阪神と中日がシーズン終盤の9月に伸ばしたのに対し、成績の振るわなかった巨人が夏以降動員を減らしている。また、横浜、ヤクルトも消化試合となった9月は動員を減らしている。広島が9月に動員が延びたのは、阪神の優勝がかかった試合が広島主催試合にあたったという特殊要因が関連しているものと思われる。また、阪神の場合8月の動員が落ち込んでいるが、これは夏の高校野球の期間に当たるため、甲子園球場での開催が少なくなることが影響していると考えられる。
一方パリーグでは、交流戦のあった5月とシーズンが佳境を迎えた8月に動員が伸びていることが分かった。また、シーズン終盤についてはプレーオフのないセリーグと違い、日本ハムを除く5球団で9月の動員が8月を上回っており、プレーオフ制度導入の効果が観客動員面で現れていることが伺える。
図3:各球団の観客動員月別平均
プレーオフ導入による観客動員増加の効果について、別のデータから示したいと思う。表4は各球団の2005年の最高動員と最低動員を調べたものである。これによると、セリーグの最高動員はすべて阪神戦であり、7月以降の試合である。一方パリーグでは、西武、日本ハム、オリックス(於スカイマークスタジアム)が交流戦の巨人戦、その他はプレーオフ争いが佳境を迎えた8月末から9月にかけてが最高であった。
また、最低動員を記録した日は、パリーグが開幕直後3月後半から4月中旬にかけてなのに対し、セリーグは、中日、ヤクルト、巨人の3球団が9月〜10月に記録している。また、セ・パに共通することとして、最低動員を記録した対戦相手として、オリックスが最多である。
表4:各球団本拠地の最高動員と最低動員
以上から、次のようなことが推察できる。
1.パリーグはプレーオフ制度導入によって、リーグ戦の消化試合が減少したことにより、シーズン後半
の観客動員が伸びており、逆に開幕直後の動員に課題を残している。
2.セリーグは優勝争いをしたチームとそうでないチームとで、シーズン後半に差が生じている。
3. 交流戦の効果はパリーグでプラスの効果が現れたが、セリーグは逆にマイナスに働いた。また、最低動員を記録した試合の対戦相手にオリックスが多かったことは、昨年の合併騒動によるマイナスイメージを払拭できていないということを示している。
4.おわりに
観客動員は球団のチケット収入を割り出す資料となるだけに、今回実数に近い数字が公表されたことにより、今後、球団の財務状況を計算するための資料となるだろう。また、観客動員はその球団がどれだけ観客を集めるために努力をしているかを客観的に調べることのできる資料ともなる。2006年は前年との比較が可能になるため、今後も分析を進めていきたいと思う。