23日閉幕した環太平洋戦略的経済連携協定(TPP)閣僚会合で、交渉参加12カ国が年内妥結の目標維持で一致した背景には、交渉を主導する米国が早期決着に強い意欲を示していることがある。遅れて参加した日本も協議加速に貢献する姿勢を表明したが、拙速に交渉を進めれば国益を損ないかねない。時間的猶予が限られる中で、日本は利害の一致する国との連携が不可欠で、共闘相手探しに注力する。
「年内妥結がわれわれに課せられた任務だ。閣僚も交渉に深く関与していく」。米通商代表部(USTR)のフロマン代表は23日の記者会見で、こう強調した。今回の閣僚会合は、年内妥結の目標を掲げる米国の強い意向で開いた。一部の新興国が年内合意にこだわらない姿勢を見せていたため、政治レベルで交渉加速の意思統一を図るのが狙いだった。
米国が交渉妥結を急ぐのは、来年秋の中間選挙を控え、オバマ政権の公約である輸出倍増計画の達成に向けた実績としてアピールしたい思惑がある。
日本にとっても、TPPは「成長戦略の柱」(甘利明TPP担当相)。アジア太平洋地域の通商ルール作りを日米主導で構築し、海外需要の取り込みにつなげるほか、同地域での支配力を強めようとする中国を牽制(けんせい)する狙いもあり、TPPの枠組み崩壊は避けたいところ。交渉の時間がほしいにもかかわらず、協議の加速で米国に同調するのもこのためだ。