チョン氏兄弟以外では、チャ・チョルマという人物も北朝鮮の富豪として知られている。チャ氏は元外交官で、最高人民会議常任委員会の下で外貨稼ぎの仕事を独占し、数百万ドル以上の資産を集めてきたという。統一研究院のある関係者は「北朝鮮でも市場経済が浸透し、富の集中に伴う初歩的な独占・寡占が進んでいるようだ。朝鮮労働党の幹部などと近い政経癒着型の富豪も登場し始めている」と語る。専門家は北朝鮮の企業経営者について「直接市場に出にくい党幹部の『黒い金』を代わって投資し、その収益を党幹部に渡すという形も少なくないのではないか」と推測している。
■北朝鮮も急速に「10対90社会」へ
専門家は「1990年代の経済危機をきっかけに、北朝鮮では徹底した『10対90社会』が形成された」とみている。食糧配給は党中央の幹部など、平壌を中心とした地域に居住する100万人と、人民武力部、保安省、国家安全保衛部など150万人の軍関係者などにのみ行われている。平壌出身のある脱北者は「中でも最高の特権階層は韓国産や中国産の食料品でさえ『信じられない』といって口にしない。彼らは平壌竜城第1特殊食料品工場で製造される北朝鮮産の最高級品しか食べない」と明らかにした。
これに対して地方の一般農民や労働者は、毎日の食事さえ心配しなければならないのが実情だ。北朝鮮の内部事情に詳しいある政府筋は「2011年の凶作の影響で、昨年7月から米をはじめとする食料品の物価が大幅に上がった」「高利で米を借りて食いつなぐ人たちの間では『今年死ななければ、来年には後悔する』と自嘲する言葉がはやっているほどだ」と述べた。
韓国の北韓大学院大学の梁文秀(ヤン・ムンス)教授は「市場経済化が進んでいる影響で、住民の間でも貧富の差が拡大しているが、これはある意味普遍的な現象だ。ただしこれが北朝鮮社会で葛藤を広める不安要素となるか、あるいは北朝鮮で携帯電話の普及台数が250万台を突破したと報じられたことからも分かるように、中間階層を拡大させるきっかけとなるか、今後の推移を見守っていかねばならない」と語った。