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第二話 講習会場へ
 

 
 ピピピピピピピピッ


 「・・ぅん」


 目覚まし時計が鳴っている。


 ピピピピピ、カチッ―――


 俺はベッドから手を伸ばして目覚ましを止める。


 「ん~! くあぁ~」


 体を起こす手を上へ向け伸びをする。


 「は~。あぁ、今日も良い天気だな~」


 ベッドを降り窓際まで歩いてカーテンを開ける。
 ついでに窓も開けて二階から通りに目をやる。


 「あ、おはようござい」
 「(スタスタ)」
 「ま~す・・・」


 ちょうど通りを歩いていた神族の男と目があったので挨拶したが、一瞬目だけこちらに向けただけでさっさと言ってしまった。


 「相変わらずだな~。ま、仕方ないと言えばそれまでなんだけど」


 俺、天ヶ原響(あまがはらひびき)は人族だから仕方がない。


 「最初はへこんだけど、もう気にならなくなっちゃったな」


 窓を閉め、苦笑いを浮かべならが出かける用意をする。
 身だしなみを整えつつ今日の予定を確認。


 「今日は講習会だったな・・・」


 最後に腰のベルトに刀を差して準備完了。
 そのままドアへ向かいノブを回す。


 「じゃあ、いってきま~す」


 誰もいない室内から返事が来るはずもないが、習慣なのでつい言ってしまう。
 そのまま階段を降り、一階のカウンター内にいる宿のおばちゃんにあいさつする。


 「おはようございます。今日も良い天気ですね」
 「そうだね」
 「これから講習会なんで晴れて良かったですよ。あっと言う訳なので鍵お願いします」
 「あぁ」


 鍵を差し出すと手の平を出したのでその上に置く。
 そのままカウンター奥の部屋に入っていった。


 「いってきま~す」


 返事はなかった。
 だがその前にあったやりとりをしてくれるだけもありがたい。


 「おばちゃんは獣族だからな、人族に関しては無関心なんだろうな」


 獣族は人族と同じく魔法が使えない。
 その為魔族と神族には人族と同じように苦しめられたので、多少なりとも人族に同情しているのではないかと思う。


 「―――あ。ここの人やっぱり帰っちゃったのか」


 講習会場へ行く道すがら、一軒の店に張られた張り紙を見つける。
 張り紙には『一身上の都合により、当店は閉店させて頂きます。今までご利用ありがとうございました。店主』と書かれていた。


 「・・・これで俺一人か」


 この店は人族の夫婦が営んでいた定食屋だった。
 ファンタピアでは魔界、神界、獣界の食べ物が大半で、人族の料理が食べられるこの店を俺はよく利用していた。


 だが、やはりこの世界での人族の風当たりは厳しい。
 無視するだけならまだいい方で、人族と言うだけで絡んできて、あげく暴力を働く輩までいる始末だ。
 しかも周りは見て見ぬ振り。
 聞いた話だとそういった現場に鉢合わせ、止めてくれる他種族の人もいる事はいるらしいが、響は一度も見たことがなかった。


 そういったこともありここファンタピアに人族は全くいない。
 昨日までは三人だったが、今日一人になった。


 「・・・よし! 落ち込むのはもうお仕舞い! 早く会場に行こう」


 響はあえて元気よく言い会場へ向かう。
 一度だけ店―――今は空き店舗だが―――を振り返って足早にその場を去る。



 ◇◇◇◇◇



 「とうちゃ~く」


 意味もなく独り言を呟く。
 周りの目が一瞬響に集まるが、それが人族だと気付くと興味ないとばかりに目を離したり、汚い物を見るような目で見たり、殺気すら感じられそうに睨んだりしてくる。


 「最近独り言が多くなったな・・・」


 知り合いらしい知り合いもいなく、話す相手と言ったら宿のおばちゃんや買い物に行くお店の主人くらいだ。


 買い物に行けるお店も探すのに苦労した。
 『人族に売る物はない』『店に入るな』『二度と来るな』などなど散々言われた。
 今利用しているお店だって、獣族が経営していて人族に無関心だからとか、商売だから、仕事だからと割り切って渋々響の利用を許しているといった感じだ。


 「これがラストチャンス、か」


 腰に差している刀の柄を弄りながら呟く。


 ファンタピアに来てもうすぐ一カ月が経つ。
 この一カ月中に週一回のペースで計四回、講習会が開かれ、講習会の後に試験があるのだが、響は合格できずこれで四回目の参加だ。


 なので、響の目的を達成させる為のこれがラストチャンスなのだ。


 「・・・とりあえず入りますか」


 若干気落ちしつつ四回目の講習会場に入る。




 だがその時、響はまだ知らかった。



 今日が響にとっていつもとは違う日になる事を。



 全世界の全種族はまだ知らない。



 この日が一人の人族が中心となって紡がれる、新たな歴史の始まりになる事を。



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