TPP:関税5品目の攻防 日本の交渉 残る時間短く
毎日新聞 2013年08月22日 20時54分(最終更新 08月23日 08時34分)
環太平洋パートナーシップ協定(TPP)の交渉会合が22日、ブルネイの首都バンダルスリブガワンで開幕した。焦点である関税協議が本格化する。日本はコメなど「重要5品目」の扱いをひとまず「未定」として相手国の反応をうかがい、関税以外の交渉も取引材料にしながら、粘り強く「例外扱い」を求める戦術を練る。ただ高い水準の自由化を求める米国などの反発は必至。米国が「年内妥結」の圧力を強める中、残された時間は短い。
ブルネイ会合では、模倣品や海賊版の取り締まりなどを定める「知的財産保護」など、難航している10テーマに絞って交渉が行われる。中でも難しいとされるのが関税で、各国の利害が絡み合い、ほとんど進展していないとされる。
関税分野では、関税を撤廃する品目のリストを提示し合い、どこまで品目を積み上げるかの交渉になる。日本はまず、関税の対象になる約9000品目の約80%をリストに盛り込む。コメ、麦、牛肉・豚肉、砂糖、乳製品の「重要5品目」については、最初のリストには盛り込まないが、どのような扱いにするかは「未定」とし、“着地点”について手の内は明かさない方針だ。
最終的に、関税撤廃品目を100%近くまで引き上げるのが目標だが、各国とも例外扱いしたい品目を抱えており、これらが駆け引きの材料になる。政府は「守るだけでは押されるだけ」として、新興国に要求を突き付ける分野である「知的財産」「政府調達」「投資ルール」などで一定程度譲歩する姿勢を見せつつ、その見返りに関税分野で相手国が日本の主張を認めるように交渉を進めたい考え。「攻守を使い分けて最終的に関税で果実を取る」(政府関係者)というシナリオを描く。
ただ、日本がこれまで締結した経済連携協定(EPA)の自由化率は84〜88%で、米国の95%超より低い。「各国は95〜96%程度の自由化率を目指す」(政府関係者)との見方もある。日本が重要5品目と位置付ける農産品は、関税上は586の品目に細分化され、これらをすべて例外にすれば、自由化率は93.5%にとどまる。
最終的に「重要5品目」に切り込むことになれば、より難しい交渉戦術と国内調整を迫られるため、日本にとって交渉時間は長いほど望ましい。しかし、交渉の主導的立場にある米国は年内妥結にこだわっており、交渉のスケジュールも焦点となる。【宇田川恵】