(3) 中国軍は米国本土に到達し得る大陸間弾道ミサイル(ICBM)を50~75基保有している。この数は2012年から2013年にかけてほとんど変わりはない。ただし、そのミサイルの多くが移動可能になり、サイロ発射の固定ミサイルも、その防御がより堅固となってきた。また一部のICBMを鉄道の列車型の運搬施設に載せ、常時の移動をさせて、外部からの戦略核兵器の所在探知を困難にする措置が取られている。
同報告は以上の事実認定に基づき、中国に関する問題点を指摘する。
それは米国とロシアが大陸間の長距離戦略核ミサイルでも削減を図り、さらに中距離ミサイルは原則として両国とも廃絶に近い措置を取っているのに対し、中国は長距離、中距離のいずれのミサイル保有に関して、なんの規制もないという点だった。
つまり、中国は、日本国内の米軍基地や台湾、グアム島などを直撃できる中距離弾道ミサイルをいくら増強しても、なんの国際的な規制を受けない。それに対して、米国とロシアはその増強はできないという不公平である。
米国とロシア(旧ソ連)は、東西冷戦の終わりの時期に中距離ミサイル全廃条約に調印したままなのだ。だから、いまや中国に対しても核兵器や中・長距離ミサイルの削減や規制を求める時期が来たということだろう。
中国を軍縮の対象に含むことは、日本の安全保障という観点からも欠かせなくなってきたと言える。
この種の安全保障問題で軍事能力を考える際は、実際に使わないときの威力に注視しなければならない。中国が弾道ミサイルの基数を増し、命中精度を高めて、日本の主要都市をいつでも攻撃できる態勢を固めても、実際の攻撃の可能性は決して高くない。それよりもむしろ、ミサイルの攻撃能力を誇示して、外交上、政治上、あるいは経済上の要求を日本に突きつけるときの威嚇効果が重要となる。
日本側としては中国のミサイル怖さのために、普通ならしないであろう譲歩や妥協をしてしまうわけだ。万が一、中国が日本に「尖閣諸島の領有権も施政権も放棄しなければ日本本土に弾道ミサイルを撃ちこむ」と迫ってきたとき、どうすればよいのか。軍事力の非軍事効果がここにあるわけである。
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