国際激流と日本

米国・ロシアが軍縮する一方で
がむしゃらにミサイルを増強する中国

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アジア・太平洋地区の米軍施設が攻撃圏内に

 上記の「国家航空宇宙情報センター」の中国ミサイルの脅威への警告について、CIA(米国中央情報局)の元専門官たちが結成した安全保障研究集団「リグネット」は以下のような分析を明らかにしていた。

・中国軍のミサイル戦力は、通常弾頭、核弾頭の両方とも近年の近代化と増強により、純粋な自衛のための抑止力の域を脱して、アジア地域全体での大きな戦力へと発展した。その構成は準中距離、中距離、長距離の各弾道ミサイルで、核弾頭装備も多数含まれる。

・中国はいかなる軍縮や軍備管理の国際規制の対象とはなっていないため、いまミサイル能力の強化を最大限のスピードで進めている。

・中国から米国本土に届く長距離のICBMの基数は増えていないが、短距離、中距離の弾道ミサイルは急速に増え、台湾への脅威が大幅に増した。

・この短・中距離ミサイルの増強は、特に米国海軍が台湾海峡、南シナ海、東シナ海で作戦を実施する際に危険な要素となる。

・中国のミサイルは、アジア・太平洋地区の米軍施設を攻撃できるのに十分な能力を有するという点を特に警戒しなければならない。また東シナ海での米国海軍の作戦能力が削がれるということは、日本の尖閣諸島の防衛もが削がれることを意味する。

 以上のリグネットの指摘は警告の段階にとどまり、そのために取るべき対策までには触れていなかった。一方、米国の他の研究機関や専門家集団は、中国のミサイルの脅威への日米同盟としての対応策をこれまでに提示してきた。

 その種の提示の中でよく掲げられるのは、当然ながらミサイル防衛の増強、中国側ミサイル抑止のための日米側での中距離ミサイルの配備、米軍や自衛隊の基地の防御強化などである。それに加えて、日本が外交政策として中国の中距離ミサイルの規制を求めるということも必要だろう。

 中国のミサイルの脅威とは、日本にとっては、いまそこにある危機なのである。

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