【浜通りの道路整備】住民から提案しよう(8月16日)
いわき市と茨城県北茨城市を結ぶ6号国道の県境周辺約6キロを対象にした勿来バイパス計画の検討が始まった。国土交通省は、住民や企業の要望を聞くアンケートへの回答を18日まで受け付けている。計画作りに加え、設計や工事、開通後などの各段階でも、住民や利用者の声が道路行政に反映できる新たな仕組みを設けるべきだ。
いわき市内の6号国道は常磐、久之浜の両バイパス工事を進めている。常磐バイパスは、勿来町四沢から平下神谷までの延長27・7キロを平成29年度までに4車線に広げる。勿来町から北茨城市までの区間は2車線で、東日本大震災前から交通渋滞や追突事故の多発などの課題が指摘されてきた。しかし、バイパスや拡幅の具体的な計画はなく、浜通り南部の道路網の懸案だった。
勿来地区の6号国道は大震災の津波による浸水で2日間程度、通行止めとなった。近くには、迂回[うかい]路がなく、遠回りは通常の3倍近い約16キロに及んだ。災害対策の強化や復興支援のためにも道路環境の改善が必要といえよう。
国交省は住民アンケートの結果を今年度中に決める整備方針に生かす。アンケート用紙は、いわき市小名浜、勿来両地区、茨城県高萩、北茨城両市の世帯に配布されている。同省の磐城国道、常陸河川国道の両事務所、各県・市のウェブページからは誰でも回答できる。2回目のアンケートには、対策の複数案を示し、あらためて意見を募る。
住民や利用者には、通勤・通学や医療施設への交通の便、災害時の緊急輸送路の在り方などに対して、日頃から感じている疑問や要望を積極的に提案してほしい。
大震災で被災した県内の6号国道は今年4月までに、ほぼ復旧した。ただ、東京電力福島第一原発周辺の十数キロの通行は許可を求められ、大震災前のような自由な行き来は認められていない。道路の除染作業は継続中で、完了時期は見通せない。分断されている浜通りの復興には、6号国道と常磐自動車道の全面的な開通や、代替路として利用されている阿武隈山系の道路整備が急務だ。
国交省は東北地方の復興道路の早期整備に向け、民間の技術力を生かす官民の連携、入札・契約制度の工夫など総合的な対策を取り入れた。県内の国・県・市町村道の整備にも、新たな取り組みが欠かせない。一時的に多額の予算を付けても、工事がはかどるわけではない。復興加速のために公共事業の進め方を見直す時期だ。(安田 信二)
( カテゴリー:論説 )