NHKの連続テレビ小説『あまちゃん』で登場したレールファン
岸田法眼 | レイルウェイ・ライター
三陸鉄道が再びブームになることを祈念してのストーリーなのか
私は、先日放送された『朝まで“あま”テレビ』で、初めて『あまちゃん』の世界を覗く。天野秋は、東京出身なのに東北弁をサラリとマスターする“破天荒キャラ”に映った。TBSの『半沢直樹』共々、“破天荒キャラ”が主人公のドラマは、視聴者ウケしやすい。
さて、『あまちゃん』では、三陸鉄道北リアス線を「北三陸鉄道リアス線」として登場している。赤字ローカル線と過疎化が進む町の活性化対策として、レールファンをターゲットにしたイベントを相次いで開催したところ、おおげさな大ヒットとなる。近年の鉄道事業者は“「ゆるキャラ」という名のイメージキャラクター”を開発しているが、北三陸鉄道は「ミス北鉄」で勝負した。イメージキャラクターを公募で決める姿勢は新鮮に映った。
『あまちゃん』に登場したレールファンは、帽子、眼鏡、ザックという、“オタクスタイル”が多く、実際にそういう人を見かけるのだから、「事実に基づいている」としか言いようがない。
騒ぐのは、お座敷列車だけにしてほしかった
私が気になったのは、レールファンの非常識な行動を描いていたことだ。
1つ目は、定期列車の車内で、天野秋(北の海女)と足立ユイ(ミス北鉄)がウニ弁当を販売すると、レールファンが一斉に騒ぎだし、買い求めようとしていた。明らかな迷惑行為だ。車内には、“生活の足”とする乗客がいるのだから。
残念なことに、こういう光景も事実に基づいている。
2010年1月24日、JR東日本京浜東北線用209系が18年の活躍にピリオドを打った。この日、私は大宮―東京間利用する予定だったが、ダイヤ乱れにより、始発大宮から乗ることができず、やむなく東北本線の普通電車で上野へ先回りした。
京浜東北線209系が上野を発車すると、乗務員室寄りではレールファンのわめき声がうるさい。おまけに冬であるにもかかわらず、側窓を開けている。公共の乗り物であることをわかっておらず、狂喜乱舞の状況だった。おそらく、鉄道趣味や関心がない乗客は、JR東日本に苦情を出したのかもしれない。
2つ目は、レールファンの集団が天野秋と足立ユイを執拗に追いかけ、見つけるとすぐにシャッターを切る姿だ。常軌を逸脱したパパラッチなみの行動に唖然とした。実際、そこまでやるレールファンはいないと思う。
例えば、芸能人に会えるイベントでは、撮影できる場を設けている場合がある(ほとんどは撮影、録音禁止)。どの分野の健全なファンは、マナー、モラルなどを遵守しているはずだ。どんな分野の愛好者が人を執拗に追いかけるのは、ファンではなく“異常な人”なのだから。
『あまちゃん』では、お座敷列車のシーンがあり、団体臨時列車という設定だった。レールファンは“盛り上げ役”となり、北三陸鉄道開業25周年を祝った。定期列車ではないので問題ない行動だ。お座敷車両というのは、だんらんの場なのだから。
『朝まで“あま”テレビ』を見て、“レールファンのマナーやモラル等低下”という現実を面白おかしく描いたNHKの姿勢が遺憾である。レールファン諸氏も、こういう描かれ方をされないよう、危機感をもってほしい。