狩野:実は内田は、奇しくもヅダと正式採用を争った旧ザクのHGUCも担当しているんですが、こうやって並べたとき(写真参照)一番違って見えるのは、やはりそこですよね。ディテールの密度感が、ちょっと現実の兵器の模型っぽいというか。ただ、実はここまでモールドが細かいのには、別の理由もあるんです。ヅダをキット化するにあたっては、当然「何番機にするの?」って話になるじゃないですか。でも、予備機以外は迷彩があるんですよね。
内田:部品分割で色分けできなくはないんだけど、そうすると恐ろしく組み立てにくいモノになっちゃうし、さりとてシールで再現しようと思ったら、すごい値段になっちゃうし。それで今回は、予備機をリリースしたんです。
狩野:ただ、予備機だからって表面がツルツルのままリリースしても「それじゃヅダの雰囲気は出ない!」と。じゃあそのぶん「表面のモールドは細かく入れていきましょう!」という判断ですね。
岸山:それに、やはり『IGLOO』という映像作品自体も、そういうディテールの細やかさがひとつの魅力ですから。HGUCシリーズには「アニメで活躍したMSのイメージを再現する」という統一コンセプトがあるんですが、その文法に引き寄せるとこの魅力はスポイルされちゃうんで、だったらいっそ「見たまんまの凄味を追いかけるべ!」と(笑)。
内田:そういうディテールの点では、ほかのMSと違って「3DCGのホンモノがある」というのが、すごく有難かったですね。
狩野:でも僕の経験から言えば、CGだと演出の力でカッコ良く見えたモノが、そのまま立体にすると「アレ?」っていうケースも多々あるんですよ。映像はカメラアングルと照明で見せるものだから、それは当たり前と言えば当たり前なんですけど、画面のMSがどんなに大きく見えたって、プラモデルは小さいのがちょこんとあるだけですからね(笑)。さりとて立体で画面での雰囲気が出てなかったら「それでいいの?」となっちゃいますから、スタンドやエフェクトパーツでスピード感を強調したり、肩を怒らせたり顔を大きくしたりといったディフォルメーションが要求されるんです。このへんは車の模型とかでも同じことなんですが、もっと恣意的にやっていかないとキャラクター性が出せません。
内田:ただ今回のヅダに関して言えば、元CGの整合性が高かったせいか、そういう苦労はほとんどありませんでしたね。設定画像レベルでも劇中の印象レベルでも、そっくりなモノに仕上がっていると思います。