企業の投資を促すために、必要な政策とは?

国内銀行の貸出状況からわかる、アベノミクスの限界

補正予算や駆け込み需要に依存する貸出増

現在の設備資金貸出を牽引しているのは、住宅駆け込み需要に起因する「不動産」と「個人」、そして大型補正予算に起因する「建築」だ。

本来は、金融緩和が実質金利を引き下げ、それが設備投資を増大させて資金需要を増大させ、それがマネーストックを増加させるはずだ。しかし、実際にはそうではなく、マネーサプライは公共事業や住宅駆け込み需要によって影響されている。

公共事業や住宅駆け込み需要には、継続性の点で問題がある。消費税引き上げが実現すれば、住宅駆け込み需要は激減するだろう。また公共事業の確保のためには、大型予算を編成し続けなければならないが、それには、財源面の厳しい制約がある。

なお、長期金利の上昇は住宅ローン金利を引き上げ、個人の住宅ローン借り入れを抑制する可能性があることにも注意が必要だ。

一方、製造業に対する貸出や設備投資は、つぎの三つの理由により、増えない可能性が高い。

第一に、設備過剰感が依然強い。13年6月の日銀短観によると、設備過剰判断DI(過剰-不足、%ポイント)は、全規模・全産業でプラス5だが、製造業では、プラス12だ。13年3月のプラス14よりは改善したが、11年9月調査のプラス10に比べると過剰感が強まっている。

第二に、設備投資を国内ではなく、海外で行う可能性が高い。

第三に、内部留保率が高いため、借り入れに依存する必要がない。非製造業の設備投資額は製造業の2倍程度である。しかし、表に示す設備資金貸出で見ると、残高で見ても新規貸出で見ても、非製造業は製造業の10倍以上になっている。これは、製造業が借り入れに依存しない財務体質であるためと考えられる。

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