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( ^ω^)はペルソナ能力を与えられたようです
- 38 : ◆iAiA/QCRIM []
:2008/09/27(土) 02:04:50.19 ID:Hz2ycwbY0
泰炎祭まではまだ10日あるのだが、準備はすでに最後の仕上げに入っていた。
厨房も、内装もほぼ完璧にできている。
なるべく早く終わらせて、宣伝に力を注ごうという戦略だった。
( ゚∀゚)「おお! なかなかいいデザインじゃねーか!」
('A`)「こいつは昔から絵がうまかったからな」
( ^ω^)「あんま褒めるなお」
ブーンが作った宣伝用のビラとポスターも好評だ。
私語も程々に、皆黙々とするべきことをこなしていた。
これが終われば、本腰を入れて受験勉強をしなければならない時期だ。
進学しなくとも就職活動が待っている。
わかっているのだ。6人全員で遊べられる時間は、もう余りないということが。
そんな野暮なことは誰も言わない。だから今、できることをするのだ。
大切な思い出を作るために。
川 ゚ -゚)「そういえば」
そんな中、クーが珍しく手を止めて口を開いた。
- 39 : ◆iAiA/QCRIM [] :2008/09/27(土) 02:08:42.77 ID:Hz2ycwbY0
川 ゚ -゚)「今結構噂になってる、『ペルソナ様遊び』を知ってるか?」
ξ゚听)ξ「あー知ってる なんかデレとかもやってた」
( ゚∀゚)「ペルソナ様を呼んで、願いを叶えるってヤツか?」
川 ゚ -゚)「ああそうだ まぁ何かが起きたって話は聞いてないが…一種のおまじないだな」
( ^ω^)「クーがそんな話をするなんて珍しいお」
川 ゚ -゚)「失礼だな 女の子はそういうのにビンカンなんだぞ」
(´・ω・`)「それで、やってみたいってことかい?」
川 ゚ -゚)「ああ、息抜きにやってみないか?」
ξ゚听)ξ「たしか4人でそれぞれ部屋の四隅に立って、呪文を唱えて、それで向かいの人の肩を叩くんだっけ?」
川 ゚ -゚)「そうだ そしてまた呪文を唱えて、進んでいく」
(´・ω・`)「それで最後の人が呪文を唱え終わると、ペルソナ様が来て、願い事をする」
( ^ω^)「ショボンも知ってたのかお」
(´・ω・`)「ああ、小耳にはさんだ程度だけどね」
- 40 :VIPがお送りします [] :2008/09/27(土) 02:10:10.50 ID:cFAse8hP0
ご立派様光臨の予感
- 41 : ◆iAiA/QCRIM [] :2008/09/27(土) 02:12:12.23 ID:Hz2ycwbY0
('A`)「んじゃ、クーとツンとジョルジュとショボンでやってみりゃいいんじゃね」
川 ゚ -゚)「ドクオ、怖いのか?」
(;'A`)「ち、ちげーよ 詳しく知ってそうだったからさ」
( ^ω^)「おっおっ 僕もいいから4人でやればいいお」
ξ゚听)ξ「あら ブーンも怖いの?」
(;^ω^)「ち、違うお 僕はただ……」
願い事なんか、ないから。
そう言いかけて、ブーンは言葉を呑んだ。
ξ゚听)ξ「? まぁ怖くないってことにしておいてあげるわ」
川 ゚ -゚)「さぁやるぞやれやるぞ ラストは私な」
ものすごく張り切っているクーに苦笑して、他の3人も配置へと向かった。
残されたブーンとドクオは教室の真ん中に立つ。
教室の3分の1が厨房になっている為、仕方なくフロアスペースだけですることになった。
一番手は、ジョルジュ。
( ゚∀゚)「んじゃ、始めるぜ」
- 42 :VIPがお送りします [] :2008/09/27(土) 02:13:11.11 ID:33mV7D3B0
フロアスペースをアフロスペースと読んだ
支援
- 45 : ◆iAiA/QCRIM [] :2008/09/27(土) 02:15:56.59 ID:Hz2ycwbY0
( ゚∀゚)「ペルソナ様 ペルソナ様 おいでください」
呪文を唱え、向かいに居るショボンへと歩く。
('A`)「なぁブーン」
( ^ω^)「なんだお?」
('A`)「なんか…怖い話に似たようなのあったよな」
( ^ω^)「お? どんな話だお?」
ジョルジュがポン、と、背を向けていたショボンの肩を叩いた。
(´・ω・`)「ペルソナ様 ペルソナ様 おいでください」
同じ様に呪文を唱え、次のツンの方へと歩く。
('A`)「雪山で遭難した4人組が、寝ないようにこれと同じことをしたんだ」
( ^ω^)「それはナイスアイデアだお でもそれのどこが怖い話なんだお?」
('A`)「ああ、朝になってそのまま救助されたんだけどな…」
ポン
- 46 :VIPがお送りします [] :2008/09/27(土) 02:17:47.08 ID:tvzSY54O0
wktk
- 47 : ◆iAiA/QCRIM [] :2008/09/27(土) 02:19:27.16 ID:Hz2ycwbY0
順番は、ツンへと回る。
ξ゚听)ξ「ペルソナ様 ペルソナ様 おいでください」
('A`)「死んでたんだよ、一人」
気づけば外は、夕闇。
( ^ω^)「……」
('A`)「硬直時間から、死んだのは夜、遅くとも深夜だったらしい」
雨を降らしそうな、黒い雲が空を覆っていた。
( ^ω^)「でも…3人は死んでないってことは…」
('A`)「ああ…朝までちゃんと、それをしてたんだ」
ぞくり、とブーンの肌が泡立つ。
それはドクオの話のせいなのか、わからない。
それは、違和感。自分の中で、何かが蠢いているような──
ポン
- 48 :捨てねこ ◆Cat3....ws [] :2008/09/27(土) 02:21:12.22 ID:qN92QZ0fO
細かくてすまんが
泡立つ→粟立つ
だな
- 49 : ◆iAiA/QCRIM [] :2008/09/27(土) 02:23:16.52 ID:Hz2ycwbY0
そして最後に。
川 ゚ -゚)「ペルソナ様 ペルソナ様 おいでください…」
瞬間、空が光った。
眩しいと感じる時間さえも与えずに、次に轟音が襲う。
雷鳴。
自然の強大な咆哮は、大地をも揺るがした。
もたつき、倒れこむブーン達。
………ィィィ………
音が、迫る。
……キィィィィィィィ……
( ゚ω゚)「おぉぉぉ……なんだ…お…」
不愉快な、強烈な耳鳴りが襲う。
キィィィィィィィィィィィィィィィィィィィイ!!!
その音が頂点を迎えたと同時に、ブーン達は意識を失った。
- 51 : ◆iAiA/QCRIM [] :2008/09/27(土) 02:27:47.87 ID:Hz2ycwbY0
最初に感じたのは、浮遊感。ブーンはゆっくりと目を開く。
そこは暗く、長い長いトンネルのようだった。
そのトンネルを、ブーンは飛んで…いや、流されていた。
時々駆け抜ける、欠片の様なモノ。
そのどれもが、ブーンにはどこか見たことがあるように思えた。
あの夢とは正反対だ。
ふと、そんなことを思い出していた。
夢で見た、白い、白い世界。
それはとても居心地の良いもので…この場所とは全てが正反対だった。
唯一違うことは、これが夢のような気がしないということ。
夢の中でもごく稀に、なんとなく夢だと自覚できることはあるだろう。
意識はしっかりしている自覚はブーンにはあったのだが、とても夢だとは思えない感覚だった。
出口が、近い。
なぜだかわからないが、それを感じ取っていた。
そう思った瞬間、白い光がブーンを包み込み、思わず目を閉じる。
目を閉じてもわかる程にその光は強く、しかしどこか、温かい光だった。
高度が下がり、ブーンは足が固い何かについたのを感じた。
- 52 :VIPがお送りします [] :2008/09/27(土) 02:29:21.79 ID:33mV7D3B0
wktk
- 53 : ◆iAiA/QCRIM [] :2008/09/27(土) 02:32:21.67 ID:Hz2ycwbY0
両の足でしっかりと地面を踏みしめると、ブーンは目を開けた。
光は何処かへと消え、代わりに映るのは、光り輝く黄金の柱。
その向こうに見えるのは、真っ黒な布に宝石を散りばめた様な…。
紛れもなく、宇宙だった。
黄金の地面から伸びる、黄金の4つの柱。
そしてその中心には一つの、いや、一人の影。
ブーンはじっくりと、『彼』を見つめた。
やがてその男は、ゆっくりとブーンに近づく。
『男』の顔には、蝶をあしらった様な黄金の仮面がつけられていた。
その蝶は、どこかブーンが夢で見たものに似ていた。
不思議と警戒心はなく、落ち着いた様子でブーンは『男』を見つめる。
少しだけ、『男』の口元が緩んだ。
- 55 : ◆iAiA/QCRIM [] :2008/09/27(土) 02:36:37.37 ID:Hz2ycwbY0
『ようこそ、御初にお目にかかる』
『私はフィレモン 意識と無意識の挟間に住まう者』
『さて、君は自分が誰であるか名乗ることはできるか?』
突然の、問いかけ。
しかしブーンは、ごく自然に。
( ^ω^)「内藤、ホライゾン」
応えたブーンに、フィレモンと名乗った男は満足気に頷き、
『結構 ここにきて、自分が誰であるか語れる者は多くない どうやら君は合格のようだ』
『ところで君は、自分の中に複数の自分の存在を自覚したことはないかね?』
『神のように慈愛に満ちた自分 悪魔のように残酷な自分』
『人は様々な仮面をつけて生きるモノ』
『今の君の姿も、無数の仮面の中の一つでしかないかもしれない』
( ^ω^)「……」
- 57 : ◆iAiA/QCRIM [] :2008/09/27(土) 02:40:16.28 ID:Hz2ycwbY0
ブーンには、時々自分がどうしたいのかがわからないことがあった。
それをそのままフィレモンの言葉に当てはめるのは早計だが、不思議と共感させられる物があった。
尚も声は続く。
『しかし、君は自分が誰であるか名乗りを上げた』
『その強い意志に対して、敬意と力を送ろう』
フィレモンが手を伸ばし、その手がぼんやりと光る。
それはまるで、白い炎のように。
ゆらゆらと揺れる炎は、力強くうねる様に、確かにその存在を示しだしていた。
『ペルソナ』
ドクン、とブーンの鼓動が高鳴る。
『心に潜む、神や悪魔の姿をした、もう一人の君を呼び出す力だ』
『字都の地は、巨大な闇に支配されようとしている』
『そして間も無く、その闇は己が牙を見せるだろう』
- 59 : ◆iAiA/QCRIM [] :2008/09/27(土) 02:45:13.80 ID:Hz2ycwbY0
炎が集束し、光放つ一つの欠片となって、ブーンの胸へと向かう。
それもまた、夢で見たものと同じ光景。
あの蝶の様に、欠片もまたブーンの体へと溶け込んだ。
体の、心の中で何かが熱く燃え上がる感覚をブーンは感じていた。
それはとても力強く、渦を巻くように。
『この力、きっと君の力になるだろう』
ふわりと、足が地から離れる。
同時に、フィレモンの姿が遠ざかっていく。
輝く星達が一つ、また一つと消えていき、あの黄金の床と柱も一つの星程になった時。
『さぁ、戻りたまえ 君が在るべき時間と、空の下へ』
近くに居た時と変わらない大きさで、フィレモンの声が響いた。
それが終わると同時に、ブーンの意識は再び闇の底へと沈んでいった……。
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