昨年2月、作業員5人が死亡したJX日鉱日石エネルギー水島製油所(倉敷市)の海底トンネル事故で、工事元請けの鹿島は23日午前、横坑先端に埋まったままの大型掘削機(シールドマシン)を約1年半ぶりに引き揚げた。機体表面には目立った破損はなかったが、内部の機械は事故当時の水流や土砂で激しく壊れている。岡山県警は24日に近くの埠頭に陸揚げして実況見分。横坑の崩落との因果関係を調べる。
引き揚げは、国と捜査当局が要請。掘削機(全長6・34メートル、直径4・95メートル、重さ123トン)は海面11メートル下の海底から、さらに12メートル下の横坑内に埋没。証拠保存のため、傷つけないまま引き揚げる「世界で例がない難工事」(鹿島)とされ、4月以降、浚渫(しゅんせつ)船が土砂を取り除くなど準備を慎重に進めてきた。
この日は、周辺海域は船舶の航行が禁止され、引き揚げ地点をオイルフェンスで囲んだ。掘削機は海中で鉄骨製台座に載せられており、午前10時、クレーン船がワイヤでゆっくり引き揚げると、約5分後に赤茶色のさびで覆われた筒状の巨大な機体が浮上。約30分かけてクレーン船の甲板に載せた。クレーン船で約6キロ離れた同市玉島乙島の埠頭(ふとう)に運び、陸揚げされる。
事故は昨年2月7日午後0時半すぎ、同製油所から西へ約160メートル掘り進んだ横坑内部(内径約4・5メートル)で内壁(セグメント)を組み上げる作業中に発生。天井部が崩れ、大量の海水や土砂が流入したとみられる。亡くなった作業員が事故発生直前に「漏電、ブレーカー」と地上に電話していることから、県警は約1カ月かけて掘削機内部の計器類や電機系統のトラブルの有無を調べる。