たかが水漏れと侮っていたのだろうか。レベル3。大事故に重なる大事故と言っていい。福島第一原発内で大量の高濃度汚染水が漏れていた。止められる見込みもついていない。国は無責任すぎないか。
それも、ただの事故ではない。原子力規制委員会は、国際的な尺度(INES)に合わせたこの事故の重大性の暫定評価をレベル1からレベル3まで引き上げる。
レベル3は「重大な異常事象」と定義され、レベル4以上が「事故」ということになっている。
しかし、一般の常識に照らせばそれは重大な事故であり、人災ではないのだろうか。
レベル7の「深刻な事故」に分類される福島原発は、収束に向かうどころか、大事故の上に大事故を日常的に重ねている状態だ。
これでは漁師たちだけでなく、周辺住民もたまらない。
汚染水漏れを起こしたとみられるタンクは、二年前から応急的に導入された「フランジ型」と呼ばれるタイプである。
鋼鉄の板をつなぎ合わせてボルトで留めたもの。つなぎ目はゴムパッキンで埋めてある。水漏れの危険があることは素人にも分かる。近づくだけで人の命が危険になるような、高濃度汚染水の保管場所とは思えない。二十五メートルプール一杯分もの水漏れを見逃していたずさんな管理体制のこともある。そのうち、海へ流せばいいと、高をくくっていたのではないか。
韓国のアシアナ航空は十月以降、ソウル−福島間のチャーター便の運航を止めるという。このままだと波紋はさまざまに広がりかねない。
溶接型のタンクを一基造るのに数カ月かかるとか、周囲を凍土壁で囲むのに一〜二年かかるとか、費用を負担するのは誰かとか、そんな悠長なことを言っている場合ではないはずだ。
内外の不安に対してもっと真剣な危機感を持って対策を急いでもらいたい。レベル3の事故を何とかせねば、レベル7を収拾できるはずもない。
国民の東電への不信は、さらに高まった。今や政府への不信も募りかねない。
産・官・学の総力を挙げて地下水の流入箇所と流出場所を突き止め、ふさぐ努力をしてほしい。
今この瞬間にもタンクから漏れ出ていくのは、この国の安全と信用なのである。
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