トヨタ:系列部品メーカーへの支給鋼材を下期約12%値上げへ
8月23日(ブルームバーグ):国内最大の自動車メーカー、トヨタ自動車 は今年度下期(10-3月)に系列主要部品メーカーに支給、販売する鋼材価格を上期(4-9月)比で約12%値上げする方針を伝えた。
事情に詳しい関係者3人が非公開情報のため匿名を条件に明らかにした。それによると、トヨタは21日に開いたサプライヤーとの会合で、下期に部品メーカーへ支給する熱延鋼板について、1トン当たり上期比8000円高の7万4500円にすると通知した。上期は前年度下期比で8000円の値下げだったという。
トヨタは新日鉄住金 などの鉄鋼メーカーから大量購入した鋼材の一部を取引先の部品メーカーに販売している。関係者1人によると、リーマンショック後の需要低迷やその後の急激な円高を背景にトヨタの支給鋼材価格は値下がり傾向が続いていたという。自動車産業のすそ野は広く、トヨタの支給材価格の値上げが幅広い業種に波及していけば、安倍晋三政権が目指す継続的な物価上昇を下支えする可能性もある。
7月23日付の日本経済新聞は、トヨタと新日鉄住金が今年度上期の鋼板価格を前年度下期比で1トン当たり1万円(約10%)値上げすることで合意したと報じていた。トヨタの部品メーカーへの支給鋼材の価格は、これを受けて決められた。
トヨタ広報担当の酒井良氏はコメントを控えた。
円は戦後最高値から下落11年10月に戦後最高値の1ドル=75円35銭をつけた円相場は、安倍政権の発足を見据えて昨秋から円安が進行した。主力市場の米国販売も好調なトヨタの業績は急回復しており、今年度の純利益は前年度比54%増の1兆4800億円を見込む。一方、鉄鋼は国内最大手の新日鉄住金が前年度に最終赤字を計上するなど苦戦を強いられてきた。
新日鉄住金の前年度決算の説明資料によると、前年度の国内鋼材消費は6125万トンだった。そのうち、普通鋼鋼材消費は4881万トンで、自動車産業向けが1152万トンと4分の1近くを占めている。
立花証券の入沢健アナリストによると、トヨタの支給材価格は部品メーカーと鉄鋼メーカーの個別交渉の参考にされるといい、その値段が上昇に転じることは、鉄鋼メーカー側にとってメリットになり、特に自動車関連事業の比率が高いメーカーへの「インパクトは大きいと思う」と述べた。
入沢氏はまた、トヨタの支給材値上げは安倍政権のアベノミクスが目指す物価上昇の浸透の一例とも受け取れると話した。
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更新日時: 2013/08/23 00:01 JST