こうした政治的な実力者が動き出すと、政治的な展開がガラッと変わってくる。これが政治だ。週刊ダイヤモンド8月24日号で「この期に及んで議論が沸騰 「消費税増税見直し」のリスク」という記事があるが、政治とはそういうものだ。
見直し議論自体は正統なもの
もっとも、政治では手続きが重要だ。今行われている見直し議論はキチンと法律に則ったものなので、議論としては正統性がある。
というのは、昨年8月に成立した消費税増税法附則18条で、第1項は「消費税率の引上げに当たっては、……名目の経済成長率で三パーセント程度かつ実質の経済成長率で二パーセント程度を目指した……必要な措置を講じる。」、第2項は「成長戦略並びに事前防災及び減災等……施策を検討する。」とし、第3項で「この法律の公布後、消費税率の引上げに当たっての経済状況の判断を行うとともに、経済財政状況の激変にも柔軟に対応する観点から、第二条及び第三条に規定する消費税率の引上げに係る改正規定のそれぞれの施行前に、経済状況の好転について、名目及び実質の経済成長率、物価動向等、種々の経済指標を確認し、前二項の措置を踏まえつつ、経済状況等を総合的に勘案した上で、その施行の停止を含め所要の措置を講ずる。」と書かれており、この第3項に基づく判断をしているからだ。
安倍首相が、昨年の消費税増税法案に賛成したからといって、来年4月からの消費税増税に無条件に賛成すべきというのは言いすぎだ。昨年の消費税増税法の附則18条第3項に基づき、「その施行の停止を含め所要の措置を講ずる」かどうかを議論しているだけだ。
もっとも、政府が増税凍結法案や増税見直し法案を秋以降の国会に提出しない限り、来年4月から消費税増税になるのも正しい。
また、「消費税増税しても景気は落ち込まない」と増税論者はいうが、これはある意味で間違っていない。というのは、増税した分をみな財政支出または減税措置すれば、景気は消費税増税で落ち込んでも、財政支出または減税措置で戻るからである。これは、消費税増税法附則第18条第1項と第2項で書かれている政府の「必要な措置」または「施策」である。ちょっとしたジョークのような話であるが、減税措置として消費税減税もありうる(=消費税増税しないこと)ので、是非やってほしいところだ。