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スペシャルインタビュー「スピッツ」

大作思考は、今の世の中と自分との関わり合いの中でリアルじゃなくなった

――あ、本当ですね。今、共有してませんでした (笑)。でも確かにレコーディングなんて実際問題自分たちだけでは成立しないところがありますからね。改めて今回のレコーディングはいかがでした?
草野「テクノロジーの発達で、今ってコンピューター上で何でもできちゃうんですね。なので、試行錯誤しても許される環境になってきてるというか。昔だったら試しにやって欲しいっていうことにものすごく時間がかかってたけど、今はチャチャッとできるようになったから、そういう意味では納得度は高いものが最終的にはできましたね」
田村「効率よくね。あと、俺らって長い間スタジオに入っててもいい演奏ができないので、ちゃんと練習をしようと。リハーサル時間をいっぱい取っていっぱい練習してレコーディングに臨んだんです。そういう意味ではアナログチックですよね。そういうアナログな部分を俺らは俺らで磨きつつ、現場ではテクノロジーとか最新技術によって効率が高まるっていう。年取ってくると集中力もなくなってくるからね(笑)。テツヤなんて夜9時過ぎると眠くなるから(笑)」
三輪「俺は昔からそうだから(笑)。でも今回、レコーディング始める時間が早かったじゃん? 前よりも2時間ぐらい早くスタジオに入って始めてたからね」
﨑山「そういうの結構大きいよね。前は晩ごはん食べてその後も作業してたけど、最近は晩ごはんの前に終わったりして」
三輪「亀田さんの提案だったんだよね。生活のサイクルとしても、精神的にもそっちの方がいいんじゃないかって」
﨑山「うん。でも今回って、4人で出すグルーヴみたいなのは一番強力な気がしますよね。リズムのビジョンみたいなものを共通して持ててたし、シンプルに気持ちいいグルーヴっていうのは今までで一番かなって」
スピッツ――シンプルという意味では、歌詞はもちろん、楽曲そのものの佇まいがすごくシンプルだなという印象も受けました。聴き終わった時、大事なものがひとつちゃんと残るというか。
草野「2011年は心が弱ることが多かったんですが、そういう中でツアーをやったりしたことで、“明日があるって当たり前に思っちゃダメなんだな”っていうことを考えるようになったんです。そうすると、作る曲がどんどん短くなっていったんですよ。短く簡潔にポン! と聴いて欲しいなって。歌詞のメッセージというよりも、まず曲がコンパクトで、メロディーも言葉も割と素直に強く響かせられるような曲というのを意識しましたね。例えば前作アルバム『とげまる』に『新月』という曲があるんですけど、あれはたぶん震災前だったから作れたなって思うんですよね。今回も長い曲が1~2曲あった方がいいかなと思って家で作ろうとしたんだけど、何かしっくりこなくて。ちょっと大作思考みたいなのは、今の世の中と自分との関わり合いの中では全然リアルじゃなくなってきちゃってるんですよね」

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