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【スポーツ】

前橋育英 初出場V 光成熱投 6試合5完投687球

2013年8月23日 紙面から

◇全国高校野球選手権<最終日> 前橋育英4−3延岡学園

前橋育英−延岡学園 初優勝を決め歓喜の高橋光(左から2人目)ら前橋育英ナイン=甲子園球場で(横田信哉撮影)

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 前橋育英(群馬)が延岡学園(宮崎)を4−3で破って初出場初優勝し、今夏の地方大会に参加した全国3957チームの頂点に立った。準決勝まで5試合41イニングで自責点0だった高橋光成(こうな)投手(2年)は4回に今大会初の自責点を喫したものの、6安打3失点で完投勝利。初出場校の優勝は1991年の大阪桐蔭以来で、14校目。群馬県勢の全国制覇は99年の桐生第一以来、2度目。宮崎県勢の春夏通じて初の甲子園制覇は成らなかった。 

 決めにいったフォークに、バットがくるりと回った。地鳴りのような歓声の中で、エース・高橋光投手が両腕を突き上げると、先輩たちが飛びついてきた。5試合続いた自責点ゼロは、決勝でとうとう途切れたが、2年生ながら背番号1の重責を背負って優勝に導いた。

 「最後は三振で決めようと思った。スタミナが足りなくて苦しかったけど、なんとか粘ることができた。ここまで来るなんて奇跡のような気がする」と目を潤ませた。

 連日35度を超える猛暑の中で全6試合に登板。準々決勝の救援5イニング以外は先発完投。1人で687球を投げ抜いた。ただ、体は限界を迎えていた。実は前日(21日)、下痢など熱中症の症状を発症。病院には行かず部屋で静養したが、「こんなに体が重いのは初めて」という状態で、この日の試合中も腹痛に襲われ、閉会式直後はトイレに駆け込んだという。

 それでもマウンドでは踏ん張った。4回、失策絡みで一気に2失点し、自責点ゼロ優勝の偉業が消えた。さらに2死満塁から右前打を打たれて3点目が入った時は一瞬「もう駄目か」と弱気になった。

 だが直後の5回、先輩たちが執念の猛攻で同点に追い付いてくれた。このとき「自分は何をしていたんだ」と覚醒。エンジンを再点火し、5回以降は散発2安打無失点。最後の打者にこの日最速141キロをマークするなど、力を出し尽くした。

 前橋より北へ約60キロ、山間部にある沼田市利根町に実家があり、子どものころは祖父が営むリンゴ園や野山を駆けまわり、近所の栗原川でヤマメをもりで突いて捕ったという。母・尋美さん(40)が「怖がりでジェットコースターは乗れないし、1人で留守番できなかった」という少年は、済美・安楽や明徳義塾・岸ら2年生エースの活躍が目立った今大会の主役にまで成長した。

 心残りは、最後の決め球が「球威がなくなっていたので、ストレートで勝負できなかった」ことと、防御率ゼロで抑えきれなかったこと。

 しかし、まだあと1年ある。「もっと成長して、最後にストレートで押して三振を取れるような、安楽を超えたと言われるような投手になって甲子園に帰ってきたい」。勝ってなお、前を向いていた。 (竹村和佳子)

 

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