蹴球探訪
5・15 J誕生20年 ラモス氏に聞く 満員の国立「幸せ感じた」(6月3日)
トップ > 中日スポーツ > 大リーグ > 紙面から一覧 > 記事
【大リーグ】最多36安打献上の岩本さんも祝福 イチローとの対戦は「僕の青春」2013年8月23日 紙面から
イチローが積み重ねた4000安打の歴史に、最も多く登場する男がいる。元日本ハムの投手、岩本勉さん(42)。通算98打席(91打数)の対戦で、1995年に本塁打で喫した1安打から実に日米の投手を通じ最多の36安打を喫した。日本が誇る安打製造機に「最も打たれた投手」だが、その36安打の中に岩本さんにとって忘れられない1安打がある。1999年6月29日にナゴヤドームで喫した左翼席への本塁打。その1本にイチローのすごさが凝縮されていた。 (寺西雅弘) ◆イチローも自賛コンマ何秒間の動きを、今でも事細やかに鮮明に覚えている。14年前の夏、天才打者との80度目の対戦だった。カウント2−2からのチェンジアップを、イチローは左翼席へ運んだ。 「完全にタイミングを外したけどやられた。僕はあれが彼の究極の一本やと今でも思ってます」。直前に90キロ台のカーブを投げていた。相手は直球待ちと読んだ。事実、イチローの踏み込みは早過ぎた。打ち取ったと思った。しかし、次の瞬間、細身の左打者は投手側に寄っていた腰を捕手側に鋭く戻し、てこのような反動でバットのヘッドを返す。ボールは左翼スタンドへ消えた。 「右腰にたまっていた体重を一気に左側に動かして(バット)ヘッドを走らせた。すごいですよ」。球界では二枚腰、ツイスト打法などと呼ばれる打ち方。ただ、当時「振り子打法」だったイチローにとって、途中で体の軸を戻すのは容易ではなかったはず…。 岩本さんは引退後に渡米してイチローと対面したとき、名古屋でのあの一発について聞いた。すると、本人も「あれが一番うまく打てた」と振り返ったという。「4000安打の中で一番なのか、僕から打った中で一番なのか分かりません。ただ僕の中では一番」 イチローに最も打たれた男−。ファンの間では有名で、岩本自身の「イチローのヒット(筆頭)株主です」は定番の“持ちネタ”だ。「もう1007回くらい言ってますね」。笑って真剣勝負を振り返るが、当時はどう抑えるかで頭を悩ませた。何度も見直したビデオ。気付いたのがその目線だった。「踏み込むまで常に目線が地面と平行に動くんです。だから、踏み込んだ後も顔が残っている。それで我慢して最後の最後でバットを右手で合わせるんです」 ◆悔しさより誇り崩されず、最後にバットを合わせ、ヘッドを走らせる。全てを一本のアーチで目の当たりにした。その後も煮え湯を飲まされ続け、気付けば36安打。だが、胸にあるのは悔しさじゃない。「それだけ対戦したんです。あのすごい打者と。誇らしいですよ」 自らの野球人生をかけた相手が史上3人目の大台にたどり着いた。「彼は僕の青春です」。4000分の36。その数字は岩本さんの誇りでもある。 PR情報
おすすめサイトads by adingo
|