- [PR]
事件
【主張】汚染水漏出 レベル評価よりも対策だ
またもや深刻な汚染水漏れである。
東京電力の福島第1原子力発電所の敷地内に設置されている地上の貯蔵タンクから高濃度の放射能汚染水が漏出した。
その量は約300トンと推定されている。この汚染水の一部が排水溝を通って外洋に流出した可能性もあるという。
汚染水問題でこれ以上、対応の遅れが続けば、第1原発の事故処理は根本から破綻しかねない。
もはや事態は、東電の取り組みだけで解決できる段階ではなくなっている。政府が前面に出て、増え続ける汚染水問題の解決に当たらなければならない。
原子力規制委員会に期待されているのは、評論家的な発言ではなく、汚染拡大防止の実効的な知恵の提案だ。世界から日本の政治の危機管理能力が注視されている。この現状認識が必要だ。
今回は、ボルトで結合した急造の貯蔵タンクから漏れた。22日の総点検で漏れが疑われる同型のタンクが見つかったことから、監視体制の強化が急がれる。
また、準備が整っていながら実行に移せない状態が続いている未汚染地下水の海への放出も必須の対応だ。原発の地階には、山側からの地下水が流れ込み、元からある汚染水と混ざって総量を連日400トンずつ増やしている。
この地下水を原発の上流側の井戸からくみ上げて、海に流せば改善されるにもかかわらず、漁業関係者の理解が得られていない。
安倍晋三首相は7日に汚染水問題への対応強化を表明したが、来年度予算での国費投入だけでは不十分だ。喫緊の課題は漁民の説得である。一日も早い地下水のバイパス放出が必要だ。なぜ、首相は自らその説明をしないのか。
次には、トラブルで点検中の多核種除去装置「ALPS」の稼働促進だ。東電には9月末の補修完了目標を達成してもらいたい。汚染水から、ほとんどの放射性物質を取り除けるこの装置が動けば、事態は大きく改善に向かう。
重要なのは、汚染水と放射能の減量に直結する対策から順に、迅速かつ確実に実施することだ。タンクの増設には限界がある。再び同種の事故も起こり得る。
規制委も汚染水漏れの事故レベルの評定などに時間を費やしている暇はないはずだ。福島事故は汚染水との闘いである。それを忘れると勝ち目はない。
- [PR]
- [PR]