はだしのゲン:松江市教委の閲覧制限要請 県内では制限なし 倉吉の2校、貸し出し禁止−−小中学校状況 /鳥取
毎日新聞 2013年08月21日 地方版
漫画家の故中沢啓治さんが自らの被爆体験を基に描いた漫画「はだしのゲン」について松江市教委が市内の全小中学校に閲覧制限を求めている問題で、県内の小中学校では同様の閲覧制限は行われていないことが20日、毎日新聞の調べで分かった。公立図書館では、鳥取市立中央図書館が利用者のクレームをきっかけに児童書コーナーにあったゲンを事務室内に2年前から移していた。また、基本的に漫画は収集していない県立図書館は閉架の状態で保管されていた。
県教委によると、松江市のように利用者が自由に手に取れない「閉架」状態にする閲覧制限を講じている市町村教委はなかったという。境港と倉吉の市教委は独自に市内の全小中学校を対象に図書室の状況を調査。境港市では10校のうち7校が、倉吉市では19校全てがゲンを所有していた。しかし、倉吉市では小学校2校で閲覧は館内のみで貸し出しを禁止。また小中学校各1校では、書籍の劣化で閲覧できないことが分かった。
一方、県内4市の各市立図書館は、いずれもゲンを所有。鳥取市立中央図書館を除き、いずれの図書館でも開架の書棚に並んでおり自由に閲覧できるという。鳥取市立中央図書館は、カウンター裏の事務所に別置きし、要望があれば、閲覧や貸し出しに応じていた。
県立図書館は、98年にゲンを外部から寄贈されたが、閉架の書庫で保管され、自由に手に取れる状態ではないという。理由について同図書館は「県内出身の作家以外の漫画は基本的に収集していないため」と説明。問い合わせがあれば閲覧や貸し出しはできるが、本が劣化しているなどの理由から、今後も開架に移す予定はないという。
県原爆被害者協議会事務局長で、自身も4歳の時に広島市で被爆した石川行弘さん(72)は「ゲンは残酷な表現があると言うが、それが原爆の実相。事実として知ってもらうことが重要で、次の世代に伝えなければならない。海外からも評価が高い作品が松江市で突然閉架になるなんて驚いている」と話している。【川瀬慎一朗】