はだしのゲン:松江市教委の閲覧制限 校長の大半、作品評価 「戦争悲惨さ伝わる」−−昨秋アンケ /島根
毎日新聞 2013年08月22日 地方版
故中沢啓治さんの漫画「はだしのゲン」が松江市立の全小中学校図書室で自由に読めなくなっている問題で、市教委は昨年10月に行った全49小中学校長を対象にしたゲンを巡るアンケート結果を明らかにした。「読んだことがある」と答えた校長40人のうち20人が感想を寄せ、その大半が「戦争の悲惨さが伝わる」などと作品を評価していた。22日には教育委員らによる定例の会議があり、この問題が初めて公の場で話し合われる。【曽根田和久】
アンケートは、学校図書室からゲンの撤去を求める陳情が市議会に提出されたことを受けて実施された。所蔵の有無や貸し出し状況、授業での活用状況などを尋ねた。その結果、所蔵(一部紛失など含む)していたのは49校のうち45校。そのうち貸し出しを可能としていたのは27校で、18校は市教委が昨年12月に教師の許可なく閲覧できないよう求める前から貸し出しをしていなかった。「漫画のため貸し出せない」が多くの理由だったが、1校は「生々しい場面がある」とした。
校長がゲンを読んだ感想では、1人が「刺激が強い場面もあり、制限が必要」と回答。別の1人は「好ましくない表現はあるものの、戦争反対が読み取れる」と一定評価した。そのほかは「戦争の悲惨さが伝わる」などと肯定的にとらえていた。古川康徳・副教育長は「作品自体を評価しているのは事務局側も同じ」と話している。
一方、市教委は学校側に閲覧制限を要請した後の今年1月、校長会で改めて要請について説明していた。
市教委によると、昨年12月の要請後、各校で閲覧や貸し出し制限を巡って対応に差が生じて現場が混乱。各校の司書から再説明を求める声が出て、1月の校長会で再説明した。古川副教育長は「現場が困っているので説明した。要請を強調した意図はない」と話した。
また、21日には閲覧制限撤回を求める要請も市教委に相次いだ。「フォーラム平和・人権・環境しまね」(杉谷肇代表)は要請書で「子どもたちと保護者に十分な説明責任を果たしていない」と批判。「知る権利」を侵害しかねないとして撤回を求めた。