2013年2月19日
【筑波大学新聞コラム】陸上競技部 久馬悠(体育1)久馬萌(体育1)「ライバルはいつも隣に」

20121227.jpg 昨年10月に行われた全日本大学女子駅伝対校選手権大会.紅葉を背に2区,3区を爽快に走るのは,久馬悠・萌(体専1年).ポニーテールを揺らして走る姿が特徴的な双子の姉妹だ.5000,10000㍍を専門としている.


 開催地は仙台.初めて走る場所だったため,最初はペースが定まらなかった.不安なまま走っていたが,声援に後押しされた.妹・萌は10位でたすきを受け取り,5位で姉・悠につなぐ.悠は区間2位の好走で,3位まで順位をあげた.結果,本学は9年ぶりの全国大会出場にして3位入賞の快挙,さらには10年ぶりのシード権を獲得した.


 チームに栄光をもたらした二人の武器は持久力だ.他選手と比べると小柄で歩幅が小さく,ランナーとしてはあまり有利ではない体型.だが,走りはじめたらペースを落とさない.中学時代から二人で毎日15㌔以上走り,培ったものだ.それに加え,大きな瞳が印象的なかわいらしいルックス.テレビアナウンスでは,他の選手を差し置いて「久馬の双子」が連呼された.1年生ながらスター性も伺える.


 二人とも,小さい頃から走るのが好きだった.小学生の時に市の駅伝大会に出場,それを見ていた地元の中学の陸上部顧問に誘われたことが,本格的に陸上を始めるきっかけとなった.
 その後は持ち前のセンスを発揮し,中学3年生で,全国都道府県対抗女子駅伝に京都府代表として出場.悠は区間賞,萌は区間新記録を叩き出した.高校2年生で,悠は世界ジュニア選手権3000㍍に出場.萌はユースオリンピック3000㍍に出場し銀メダルを獲得した.そして大学入学直後の今年6月,アジアジュニア選手権大会女子5000㍍では二人そろって日本代表として出場.悠が1位,萌が2位と,姉妹そろって表彰台に上がった.一緒に競技を始めた二人だが,勝負の世界ではライバルとなる.「二人で競い合って記録を出せたときの達成感はたまらない」と悠.お互いが負けず嫌いを発揮して切磋琢磨し,より良い成績を目指している.


 普段の生活ではとても仲良しな二人.つくばに来てからも同じ部屋に住み,家事も特に役割を分担せず一緒にやる.練習着や私服も二人で共有.たまに着たい服が「カブった」ときは,けんかにもなる.「片方が寝坊した時に起こしてくれるからいいですよね.でもたまに二人とも寝坊しちゃいます」.悠がはにかんだ笑顔で話す.本当に仲の良い姉妹だ.


 そんな二人にも,挫折の時期があった.その時期も一緒だった.高校3年生の春から夏にかけてのことだ.走るとすぐに息が切れる.そろって貧血気味になってしまったのだ.8月に行われたインターハイでは,まさかの予選落ち.最後のインターハイで二人とも決勝の舞台に立つことができず,とても悔しい思いを味わった.
 それでも一人じゃないから心強かった.二人で支え合い,両親のサポートで栄養面を徹底的に見直すことで一緒に回復.貧血が治ったことで練習意欲もわき,同年冬にはベストタイムを出すことができた.「苦しかったけど,栄養面を考えるきっかけになった.いい経験だった」.萌は笑って当時を振り返る.


 今の二人の目標は,来年ロシアのカザンで行われるユニバーシアード競技大会.この10000㍍競技に日本代表として出場することだ.将来的にはオリンピックも目指す.「レースで応援し支えてくれているたくさんの人たちに,走りで恩返ししたい」.つらいときでも,聞こえてくる多くの声援が背中を押してくれる.応援してくれるひとびとが,二人にとっての原動力だ.
 普段はおとなしく口数も少ない二人.だが勝負になると互いに負けん気を発揮し,小さな体で大胆な走りを見せる.「走ることがつらいときも,もう一人が頑張っているから頑張ろうと思える.相手を抜きたい,ベスト記録を出したいという気持ちで走り続ける」.


 静けさの中に激しい闘志を秘める二人のこれからの活躍に期待したい.

 

(筑波大学新聞 市原ひかり=社会工学類2年)