福島第一原発で、新たな事故が起きた。放射性物質で高濃度に汚染された水が、保管タンクから300トンも漏れたのだ。原子力規制委員会はきのう、8段階の国際基準に当てはめると上[記事全文]
親ひとりで子どもを育てるのは大変な苦労がいる。だから、ひとり親の税金を減らし、子育てを支援する優遇措置がある。ところがその対象は、結婚相手と死別したか、離婚した人に限ら[記事全文]
福島第一原発で、新たな事故が起きた。放射性物質で高濃度に汚染された水が、保管タンクから300トンも漏れたのだ。
原子力規制委員会はきのう、8段階の国際基準に当てはめると上から5番目の「レベル3」(重大な異常事象)に相当すると発表した。
隔離していた放射性物質を大量に環境中に逃した事態は文字どおり重大である。海外からの懸念の声も高まっている。
周辺の安全だけでなく、日本の信用にかかわる危機であり、安倍首相は早急な対応でリーダーシップを発揮すべきだ。
福島での原発事故は86年のチェルノブイリ原発事故と並び、国際基準で最も重大な「レベル7」(深刻な事故)だ。
レベル7の事故自体が収束にほど遠く、今も放射性物質による環境汚染が続いている。
その事故対策の過程で生じたタンクからの汚染水漏れを、改めて「レベル3」と判定することに異論もあるようだ。
しかし、新たな事故と位置づけることで、「なぜ防げなかったのか」という重要な問いに向き合うべきだ。
汚染水が漏れたタンクは、約1千基のうち約350基を占める簡易型で、耐用年数も5年しかない。漏れる危険性は当初から指摘されてきた。
大量漏出が起きたのは、汚染水対策が東京電力任せにされ、その場しのぎの不十分な対策が繰り返された結果だ。
汚染水問題は、安倍首相が今月7日の原子力災害対策本部で「東電任せでなく国としてしっかり対策を講じる」と述べて、ようやく省庁間に連携の動きが出てきたと関係者は語る。
汚染水対策は従来、原災本部の下の廃炉対策推進会議で、東電と経済産業省中心にまとめられてきた。それが裏目に出た。
現状の把握や国内外への説明、対策での国際連携、必要な資金投入など、省庁の壁を越えて政府が総力で迅速に取り組むべきことばかりだ。首相の指導力が問われる局面である。
事故関係の情報は原災本部の内閣危機管理監の下に集約して共有と調整を図るなど、政府として原発事故発生時に準じた態勢を組んではどうか。
東電任せの枠組みを認め、一歩引いた監督にとどまりがちだった規制委にも責任がある。
楽観に傾かず、冷徹に最悪を想定するのが役目である。漏水を防ぐ複数の代替策を準備させたり、環境汚染の徹底監視に乗り出したり、内外の最新知見を積極的に取り入れた対策の具体化をただちに進めてほしい。
親ひとりで子どもを育てるのは大変な苦労がいる。だから、ひとり親の税金を減らし、子育てを支援する優遇措置がある。
ところがその対象は、結婚相手と死別したか、離婚した人に限られてきた。結婚したことがない親は、ずっと支援の枠の外に置き去りにされてきた。
親の経済条件は、子が成長する環境を左右する。未婚で子どもをもうけたことで差をつけるのはおかしい。政府は税の控除制度を改め、幅広く子育てを支える態勢を強化すべきだ。
この制度は、「寡婦(夫)控除」と呼ばれる。もともとは、戦争で夫を失った妻の子育て救済策として戦後にできた。
その後、子をもたずに夫と死別した女性や、ひとり親の男性にも対象を広げたが、一度は結婚し、死別か、離婚した人だけに今も限定している。
税金で払う分の違いだけでなく、控除後の所得額は公営住宅に入れるかどうかや、家賃、保育料などにも反映する。
2歳の子と市営住宅で暮らす年収約200万円のシングルマザーの場合、控除がないと、所得税、住民税、保育料、家賃で年20万9千円の負担増という。東京都八王子市の試算だ。
厚生労働省の11年の全国調査によると、母子家庭になった経緯は離婚(80・8%)に続き、2番目は未婚(7・8%)で、死別(7・5%)を上回る。母の就労による年収の平均は、未婚で160万円で、死別、離婚のひとり親より低い。
見過ごせないのは、控除を受けられない経済的な不利益が、子どもに及んでしまうことだ。
未婚の母たちから人権救済の申し立てを受けた日本弁護士連合会は1月、婚外子への差別であり、憲法違反だとする要望書を出した。「結婚制度に入らなかった女性に厳しい経済的制裁を科している」と指摘した。
これを受けて八王子市は6月、未婚のひとり親も控除対象と仮定して市営住宅家賃、保育料の額を決める「みなし適用」の導入を決めた。「子は親の婚姻状況を選べない。市ができる救済を考えた」という。
同様の動きは、東京都日の出町や沖縄県内の自治体などに広がっている。千葉市、岡山市など以前から保育料にみなし適用する自治体もあった。
少子化の時代のいま、子どもは社会全体で育むべき宝でもある。どんな事情であれ、ひとりでも子育てに臨む親の負担を和らげる広範な工夫が必要だ。
政府は判断を自治体まかせにせず、仕組み自体を改め、子育ての支援をすべきである。